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ミソジの

成人式か…
なんて言葉を吐いたとき、もちろん参加してるワケでもなく、公園をふらふらと歩いていた。


関係ないけど、看板の前で写真でも撮るか。
なんて言ってはみたものの、僕の知る成人式とは雰囲気がどうも違う。


気合の入った男子とか
エロチックな和装の女子とか
そんな人どこにもいなかったし

拡声器持って喋ってる人も
のぼりを持ってる人も
喧嘩してる人も
乱入する人も
暴走する車も

そこにはなかった。

成人式に参加しない人も多いらしい。
僕は一応参加したが、行っても行かなくってもって感じだった。

「一緒行こうよ」と、高校の同級生に誘われたので、行くことにした。

会場にはなんともオッカナイ人達で溢れていたのを覚えている。


会場で友達を4人ほど増やした。

ここは危ないから帰ろう。ね!ね!
と、半ば強引に引きずり出し、一瞬だけ着席してからすぐさま会場を後にした。


4人とも賢者タイプのパーティーだ。
イケイケオラオラの飲んだくれブーストがかかった戦士に絡まれたらワンパンボコだろうと僕は読んだのだ。


僕の作戦が功を奏して、無傷で会場を後にした。
そして、うどんを食べながら昼から飲んでいた。
あの時は確かに生きた心地がした。
振袖女子に囲まれて、ガタンゴトンと、賑やかな電車に揺られ、家に帰った。



もう10年も前の話。
そんなことを思いながら
振袖女子に囲まれた僕は、またもガタンゴトンと賑やかな電車に揺られ、家に帰っている。

Twitterなんかみても、成人式で盛り上がっている。
各々の成人の日の思い出を語っているのを目にした。

思い出じゃないけど、当時の自分に言いたいことはある。
もっと、親と話しておくべきだと思う。


僕は実の親のことをよく知らない。
今思うと、口うるさく小言をたたかれることはなかった。
その分こちらも興味がなかったわけだが。

2人はどうやって出会って、僕が生まれたのか。
若かりとき、どういう人だったのか。
どんな仕事をしてきたのか。


とにかく謎がいっぱいなのである。


意外と仲良い夫婦だったのではないかと気が付いたのも最近だ。




もう会えないけど

本当だなぁって思えることが沢山あったし

自分にとっての幸せがなにかわかってきたし

大事な人やモノにちゃんと出会えたよ

と、伝えたい。

そして、ごめんねと謝りたい。

安心してもらえるくらい、自分の幸せを諦めないで生きていくね。


ハタチの誓いならぬ、ミソジの誓いだ。


ギャン泣きする赤子を抱っこするママがいた。
なんか申し訳なさそうにしてる感じも見て取れるが、この賑やかな電車内で何人が気にしているんだろうか。

直近の楽しかった日々を思い返すと少し寂しい。


夕陽はまん丸だった。

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