2.

変わることについて考えていた。

変化を受け入れられるのは若い、とか、変われなくなっていくのが大人、
みたいな話をたまにするけど
昔から自分は変わっていくことが苦手だった。

慣れない環境に身を置くことが多かったからかもしれない。
親の仕事の関係で、引っ越しを何度か経験して、いろいろと環境が変わりやすい生活だった。
せっかく仲良くなった友達が一度で全てリセットされるのは、どうしても苦手だった。
新しい環境に馴染むまでの時間は、慣れと共に短くなったが、
新しい環境に馴染んだ自分のことを好きになれなかった。

最初に住んでいた街からは富士山が見えた。
引越しが決まったとき、友人たちと離れることもそうだったが、
慣れ親しんでいた景色が変わることが辛かった。

今でもたまに訪れることがあるが、あの街はあんなに小さかったのかと
大人になってから気づいた。
その街の中が、自分の世界の全てだった。
街の中を1時間も散歩していたら、ぐるっと1周できてしまった。
成長した自分に寂しさを感じていた。

次に住んだ街は、いい思い出も悪い思い出もある。
飼っていた猫が乳がんで亡くなった土地だった。
その猫は自分が生まれる前から家族の一員だった。
自分の兄のような存在だった。
借家に住んでいたので、その土地にはもう帰ることはできない。
友人たちも特別多かったわけではないから、行く頻度も落ちた。
なんて薄情な人間なんだ、と、自分に失望した。

その次に住んだ街は、地元と呼べるほどたくさんの思い出ができた。
帰る家はないが、今でもたまに懐かしい街並みを見るために帰っている。
ただ、自分の記憶の中にある街並みからはかなり変わってしまった。

友人と屯していた公園には、いろんな施設ができていた。
よくラーメンを食べていたデパートの地下はすっきりしてしまった。
その土地にあった祖父母の家は更地になっていた。
でも祖父に頼まれてケーキを買いに行っていたケーキ屋さんはまだあった。
通っていた学校は知らない先生たちだらけだった。
友人は就職や進学を機に散り散りになってしまった。
少しずつ集まる人数が減ってしまった。

そんな状況が、たまらなく寂しく、切なかった。

変わっていくことは仕方ないし、それが社会というものであるはずなのに、
自分だけが何も変わらないまま、そこにいた気がした。
別に誰が悪いわけでもないのに、寂しくて悔しくて涙が出た。

まだ2箇所くらい住んでいた土地はあるけど、割愛。

ただいまと言って帰る家がない場所。帰ることができない場所。
別に帰るという表現だけで言えばできるけどね。

何もない土地に思いを馳せている。何か名前はないものか。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?