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ファンネル・オフェンスの諸問題(前回の記事を一部訂正します)

3月13日に、『中央公論』4月号の「専門家鼎談」を批判する記事を出した。その一部について、当事者から訂正してほしいとのリクエストがあったので、取り急ぎ簡潔に。

当該の鼎談(一部はWebでも読める)で細谷雄一氏が、東野篤子氏がSNSで発揮する「オフェンス能力」を称賛していたので、前回の記事では東野氏の関わった論争をまとめたTogetterから、以下の写真を引用して彼女の「攻撃能力」の内実を検証した。

東野氏とこのとき論争した当事者であるPeacekeeper氏によれば、上記のようなオフェンス行為は東野氏自身ではなく、Twitter上の彼女の取り巻き(フォロワー)がしたことだという。この点は明記して、ここに訂正する。

これは一般には「ファンネルを飛ばす」として知られる現象である。インフルエンサー的な著名アカウントが、SNSで誰かと論争状態に入った場合、本人ではなくそのファンが暴走ないし便乗して、論争相手に下品な罵声を浴びせる例が多い。

私自身、ある知名度の高い学者と論争した際に随分そういうことをされたし、(私の勝利で)論争自体が閉じられた後も今日に至るまで、ファンネルの一部をなしていた歴史学者から執拗に中傷されている。それについては、以前こちらの記事でご報告した。

細谷氏が評価する東野氏の「オフェンス能力」に、こうしたファンネル的なオフェンスがどこまで含まれていたのかは、わからない。しかし一般論として、次のことが言える。

自身のフォロワーが暴走して、上記写真のような不当な攻撃を論争の相手にぶつけ始めたとき、インフルエンサーが「そういうことはやめてください」とツイートするか否かは、事態の収拾を左右する決定的な要因になる。私はフォロワーを抑制する人の方が立派だと思うが、その場合SNSでの「オフェンス能力」は落ちざるを得ない。

当該部分をWebで読むことができるが、『中央公論』の鼎談での発言に従えば、東野篤子氏の場合はSNSの利用に際して、以下のようなスタンスで臨まれているそうである。

私に反論された人が意見を変えることは100%ありません。それどころか、恨みを抱いて余計に粘着してくる。それでも私の反論を見て「こう言語化すればいいんだ」「やっぱりこれが基本線なのだな」と思う人や、いかに歪んだ言説が広がっているかに気づく人もいると思うので、その輪が少しでも広がるように、と〔SNSでの発信を〕続けています。

強調は引用者

論争の相手が自分のツイートによって意見を変えることは「100%」ないが、そうした論争の様子を見て、自分のファンになる人がいる。そのために論争する、との趣旨である。すなわち「議論の相手ではなく自分の応援団に見せるために発言します」ということだから、そうした姿勢は対話よりも、「ファンネルを飛ばす」行為につながりやすい。

上記したとおり、私もそうした人と論争したことがあるので、その際の私の対応の一例を挙げておく。SNSでの「オフェンス/ディフェンス能力」のあり方と、インフルエンサー/フォロワーそれぞれの責任について、議論する一助となるなら幸いである。

(ヘッダー写真は昨年の話題書より。なお、この記事は同書著者のファンネルとして書かれているわけではないので、誤解なきよう)

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