2021年あけおめイラストメイキング
はじめに
2021年版あけおめイラストの制作過程の記録です。
構想時点から制作しながら記録したものになるため、文章が過去の現在進行形になっている部分があったりします。
ややこしくてすみません。
先に完成イラストを。
イラストの中に登場するのは、2020年内に描いたオリジナルキャラクターです。
ちょっとだけ紹介させてください。
月白の君(つきしろ の きみ)
2020年4月からアイコンキャラとして描き始めました。
ほぼ毎月のように描いていて、ほぼ毎月のように私の描き方を試す実験台になっています。
だからちょくちょくデザインが変わってたりします。
名前の「君(きみ)」は名詞として主君とか国王とかっていう意味合いがありますが、名付けにあたって大それた意味はありません。
昔、「ククルとナギ」というマンガがあって、その中に「焔の君(ほむらのきみ)」という名称があったことを思い出して、語感がいいからそのままつけました。はい。特に大それた意味はありません。
呼び方は「月白(つきしろ)さん」。
赤銅の徒花(しゃくどう の あだばな)
2020年5月に一度描いて、8月に一度リメイクしました。
最初に描いたとき、「徒花」とか「落とし子」なんて不憫なワードが浮かんできて、そのまま「紅の徒花(くれない の あだばな)」として名付けました。
リメイク後に「赤銅の徒花」に改名。
呼び方は「徒花(あだばな)さん」。
滅紫の幻影(めっし の げんえい)
2020年6月に月白さんのキャラクターデザインを描いた際に、偶然的に、私の遊び心から、色違いの月白さんとしてできあがりました。
その後9月にデザインを根底から一新。体型は月白さんとまんま同じですが、違うキャラとして確立。
名前ですが、最初に描いたとき、「Alter Ego(アルターエゴ)」の文字を添えたことから、なんやかんやあって「幻影」になりました。
呼び方は「紫(ゆかり)」さん。
滅紫(めっし)さんとか幻影(げんえい)さんだと可愛げがなかったので。
それに滅紫さんだと……某古のサッカー選手の名前になってしまって気が引けた、というのもあったりなかったり。(別に嫌いとかそういう意味じゃなくて)
三人の名前の「月白」「赤銅」「滅紫」はすべて色の名前です。
由来は見ての通り、武器の色です。
描いて名づけした当人のセンス……(遠い目
構想
・初日の出を見ようと展望台に来た三人
・山の向こうから昇る太陽
・一緒に日の出を見ようと手を差し伸べる月白さん
・日の出を見てはしゃぐ徒花さん
・日の出をバックに自撮りする紫さん
構図
あたり程度に、構想で出した要素を配置しました。
左から月白さん、紫さん、徒花さんと考えてます。
徒花さんはお供に肩車してもらっていて、三人の頭の位置が三角になるようにしてみました。
(徒花さんのお供についてはこちら(pixiv作品ページ)を参照)
いわゆる三角構図というものですね。
三人をただ横並びにさせるよりかは、画面に動きが出るんじゃないか、という意図があります。
また、このイラストのメインは月白さんです。
なので、三分割法の構図も意識しつつ、このイラストを見る人との距離を近づけてみました。
グレーで塗り潰しているスペースは、トリミングする予定の範囲です。
たぶん、これは制作が進むにつれて変わっていくと思います。
それも踏まえて、多少広い範囲を描き込んで、できあがったあとにどうトリミングするか決めます。
ラフ #1
人物の素体を描いて、顔や髪、服、小物といったものをつけ加えて、ある程度シルエットが見えるくらいまで描き込みました。
また、光源を意識して、グレースケールで簡単に陰影のイメージを。
人物をいったん消して、背景をイメージ程度に。
山々の後ろから太陽が顔を出す瞬間、ということで、全体を夜明けっぽく青味のある色で、山と空の境界を赤みのある橙色で、グラデーションをつけながら塗りました。
あたりの時点で描いた太陽の位置とずれているのは、月白さんの袖に半分近く隠れてしまうからです。
少しでも存在感を出したいと思ったので、右側に寄せました。
太陽はやや硬めのブラシで、まずは赤味のある橙色で輪郭を描き、ブラシの大きさを小さくしながら、黄色、白に近い黄色というように、内側ほどより明るくなるようグラデーションをかけています。
改めて人物を出して、試しに光の差し込みみたいな効果を。
これについては後ほど色々変更するつもりですが、赤味のある橙色を、覆い焼き(発光)レイヤーを使うと、色がより鮮やかになります。
太陽に重ねて塗ると、発光感が強まります。
ラフ #2
構想から構図まで、だいたいやりたいことができあがったので、ここから描き込みを進めます。
まずは背景。
取り入れる要素のシルエットを配置しました。
また、山のシルエットを暗めに。
理由としては、空との明暗差をつけて、そこに山がある、という存在感を出したかったからです。
そして手前に展望台みたいな感じで簡単に柵とタイルを。
足下にはレンガタイルを敷き詰めようかな、と思いました。
展望台の要素の描き込みを。
レンガタイルは、素材をつくって自由変形して重ねました。
ただ、そのままだと違和感があるので、タイルの素材レイヤーにマスクをかけて、なんとなくレンガタイルだと分かる程度に線を薄くしてみました。
なおかつ、均一に薄くすると平坦な印象になってしまうので、人物の立ち位置を考慮しつつ、線の濃淡をまばらに。
次に柵。
パッと見、材質が木だと分かればいいかな、と。
なんて、これまで自然物をあまり描いてこなかったから経験値がなさすぎる言い訳ですが。
柵の足下には草を。
ただ、これについては後々修正するかもしれません。
完全に緑をなくして土の地面を露出させるか、彩度を落とすか。
あまり彩度が高いと季節感が薄れるので。
ラフ #3
人物の線画を清書してベースカラーを。
(月白さんは諸事情で目がすでに描き込まれています)
山側の光源を意識して、人物の陰影を。
さらに柵や人物の影を。
光源の高さが光の当たる対象と同じか、やや低いと考えているので、影は徐々に薄くなるように描き込みました。
ちなみに影の長さや濃さについては、吉田誠治先生のツイートを参考にしました。
※一枚目の画像です。
人物に描き込んだ陰影や光では雰囲気の出し方が不十分なので、人物だけに色が載るようにクリッピングをして、影と光のエフェクトを重ねます。
影は乗算レイヤーで濃いめの青色を。
光はスクリーンレイヤーで橙色を。
また、レンズフレアみたいな演出も加えてみました。
これである程度入れたい、やりたい要素を入れることができました。
エフェクトは後々変更します。
とりあえずこの時点でイメージが固まればいいかな、と。
描き込み #1 振袖
試しに月白さんの振袖の柄を入れてみました。
柄って振袖というか、着物の難所……ではないでしょうか?(私見)
(エフェクトはいったん消しています)
柄の入れ方どころか、描き方すら分からないし、調べたところでどうすればいいかと手が進まなかったので、思いっきりフリー素材に頼りました。
振袖全体の柄↓
半襟の柄↓
柄の入れ方について、ただテキトーに入れるのではなく、全体の粗密感のバランスを考えました。
振袖の柄について調べてみると、様々種類があって。
裾に近いほど柄の密度が多くなるようにしてみました。
ちなみに余談。
こちら、柄を入れた直後のもの。
なんとなく、振袖のベースカラーと赤色と紫色の牡丹の色がなじんでいないように感じました。
水色ベース、あるいは白に近い青系の振袖や着物を探してみると、柄の色が淡いものが多数。
赤色と紫色の主張を弱めるにはどうすればいいのか、を考えることに。
結論。
除算レイヤーを重ねて、主張の強い部分を塗り潰しました。
紫色と赤色で塗り潰されている箇所が、除算レイヤーです。
不透明度は50%。
今回初めて除算レイヤーを使いましたが、下地と同系色の色で塗り潰すと、色合いが淡くなることが分かりました。
同じ要領で徒花さん、紫さんの振袖にも柄を入れます。
振袖のベースカラーが原色寄りなため、柄の色合いはそれほど違和感ありません。(……たぶん)
また、帯や半襟にも柄を入れました。
加えて、キャラの陰影を描き込み・修正したり、線画の色トレスをして全体を調整しました。
振袖の柄は一枚の素材をそのまま貼りつけずに、胸、袖、腰から下などとパーツごとに分けて、必要であれば自由変形をかけています。
それに、柄の大きさも考えつつ、例えば腰から下には二種類以上の素材を入れたりしています。
柄の不要な部分を削るときは、レイヤーマスクが役立ちました。
レイヤーマスクは消しゴムなどで消した部分をそのまま消すのではなく、見えなくする機能です。
また、下記画像の赤枠で囲っているチェックをはずせば、移動や変形の対象外になるため、貼りつけてマスクをかけたあとに柄を変形しても、マスクの部分は変わりません。
描き込み #2 キャラの追加と光・影エフェクトの調整
ここに来てキャラ追加です。
紫さんの後ろにウサギとコウモリを。
ウサギは月白さんの、コウモリは紫さんのお供です。
(二人のお供についてはこちら(月白さん、紫さん)を参照)
また、月白さんの左手にお年玉袋を四つ。
内訳としては、月白さん、徒花さん、紫さん。
残り一つは……ご想像にお任せします。
さて、入れたいキャラが出揃ったので、いったん消していたエフェクトを整えます。
とりあえずフレアはあとにして。
逆光を意識して影や光の濃淡を整えました。
キャラ全体にクリッピングしてある影や光のレイヤーにマスクをかけて、透明水彩ブラシで削ったり戻したりしながらの調整です。
影や光の残し具合は以下の通り。
今回のメインは月白さんなので、光の量を一番多く残しています。
三分割法の構図的に月白さんに視線が行くようにと考えてはいますが、パッと視界に入るのが月白さんになるよう、より強調したいと考えました。
描き込み #3 背景
背景の加筆・修正・調整です。
まずは柵。
ただの長方形が組み合わさっているようなものだったので、輪郭を少しゴツゴツさせてみました。
イメージとしては、細い丸太が組み合わさっている、あるいは表面をデコボコに加工された木材、といったところ。
こうすると、木の柵だ、みたいな質感になるんじゃないかな、と。
そして柵に逆光を。
向こう側から光が差しているので、柵の輪郭を明るく、輪郭の内側を暗くなるように描き込みます。
私の場合、一度柵の上に光の色をベタ塗りしてから、レイヤーマスクをかけて透明水彩で削っています。
また、柵の足下の地面の高さのラインを高くしました。
柵の根元と地面の高さのラインが近いと、崖っぷち感が強くなるので。
柵の根元より地面の高さのラインが離れていると、まだもう少し先に地面が続いている、というニュアンスを与えられます。
そして地面に生えている草。
ラフ #2の段階で修正するかもしれない、と考えていましたが、やっぱり変えたほうがいいな、と。
緑が強いと季節感が薄れてしまうので、彩度の低い黄色かつ不透明度を下げたブラシで描き直しました。
最後に太陽。
光の尾(?)をつけることで、ちょうど今山の後ろから出てきた感じを出してみました。
描き込み #4 フレア
カメラを強い光の差す方向に向けると、画面の中に円の光が映り込んだり、画面が白くなる現象があります。
イラストでは画面の光を強調する際に用いられるフレアの描き込みを。
(分野によっては光の映り込みをゴースト、画面が白くなる現象をフレアと呼んでいるそうですが、ここではフレアと表記します)
太陽を中心に放射状にフレアを入れてみました。
最初にアタリで方向やイメージを決めてから、光の円を描き込みました。
また、すべての光を一つのレイヤーで描かずに、いくつか分けています。
不透明度を下げたブラシで、緑や青の光を。
太陽の光が橙系なのに、なんで緑や青にしたか、というと、画面内にある色数を増やしたかったからです。
緑や青は背景やキャラの色にあまり使っていないので。
レイヤーの合成モードはオーバーレイにしてあります。
アタリの際に、大きな円が重なっていた部分の一つです。
これも不透明度を下げたブラシで、彩度の低い青を重ねました。
レイヤーは通常で、不透明度を60%にしてあります。
これまた、アタリで大きな円が重なっていた部分の一つ。
今度は黄色です。
ブラシサイズを大きめにしてベタ塗りな円を置いたあと、その中を削りました。
レイヤーは通常で、不透明度50%です。
三つ目。
黄色寄りの橙色です。
黄色の円と同じように、ベタ塗りの円を置いて中を削っています。
レイヤーは通常、不透明度は60%です。
四つ目。
一番大きな円です。
図形ツールの楕円を使って線の細い輪を描いて、そのレイヤーを二つコピーしました。
全部で三つある輪をそれぞれ赤、青、緑に変えて、外側から赤、緑、青の順で見えるように変形で大きさを変えました。
そのあと、それぞれの輪にガウスぼかしをかけて完成。
レイヤーモードはそれぞれ覆い焼き(発光)、不透明度は70%です。
仕上げ #1 まとめ
修正した背景に、キャラやフレアを重ねます。
描き込み #2の時点でコウモリと柵の前後感がおかしかったので、コウモリにレイヤーマスクをつけて修正しました。
仕上げ #2 文字入れ・トリミング・完成
トリミングする範囲を決めて、文字を入れます。
トリミングする範囲は、構図で決めたときとほとんど変わりありません。
トリミングの範囲を決めたら、文字を。
最初にミリペンで文字を描いたあと、その下に新規レイヤーを作ります。
文字レイヤ―を範囲選択、範囲を10px拡張して、新規レイヤーに塗りつぶしをします。
今回、『2021』は紫から青の、『HAPPY NEW YEAR』は緑から橙のグラデーションをかけています。
塗りつぶしのあと、範囲選択を解除して、塗りつぶしたレイヤーにガウスぼかしをかけます。
文字入れが終わったら、画面をトリミングして完成です。
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