「星のような喫茶店」 はらまさかず
ねむれない夜、いつ行っても、喫茶ギンガは開いています。
「いらっしゃい」
お店に入ると、銀河の模型。
今夜は、ジャズがゆっくりと流れていました。
「エラとルイ」
ぼくが言うと、
「そう。1956年の音」
と、マスター。
「いいよね」
「いいよね」
「時々さ、ちょっとおかしいって思うんだ」
ぼくは、マスターが出してくれたネクターを飲みながら言った。
「なにが?」
「このお店、ぜったい変だよね。だって、こんな真夜中に、ぼくがここに来たい時にはいつもあいている。これは、まぼろし? 昼間来たら、ここにはなにもなかったりして」
「あるよ。
だけど、星だってそうじゃない。昼には見えないけど、夜にはあるよね」
マスターがわらって言った。
「うん。見えなくても、あればいいか」
ぼくは、ちょっと、お昼に来てみようかと思っていたのですが、やめました。
(喫茶ギンガ 第5話)
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