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「くらげ花火」 はらまさかず

 ある日、喫茶ギンガに花火師の男の人が来ました。
 男の人は、
「今度、花火を打ち上げるんだ」
と言いました。
「でも、一発だけ。それも、人が集まらないように、打ち上げ場所は言えないんだ。ほんとは、みんなに見てほしいんだけどなあ」
 すると、マスターが、
「それなら沼水くんに相談するといいよ。彼は人工クラゲを研究してるから」
と、言いました。
「人工クラゲと花火?」
僕が不思議そうにすると、マスターは
「彼は、空を泳ぐクラゲを作ってるんだよ」
と言いました。

 それからしばらくして。
 夜、どーんという大きな音が聞こえました。たった一度だけ。
 ぼくは急いで外を見ましたが、何も見えませんでした。
 あー、あの人が言っていた花火だな。うちからじゃ見られなかったな。
 そう思っていると。しばらくして、ゆらゆらゆらゆらと大きな花火が空をただよって来ました。それは、無数のクラゲたちが、花火を映して空を泳いでいるようでした。町の人はみんな空を見上げ、くらげ花火に見とれました。
(喫茶ギンガ 第2話)

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