「待ってるよ」 木村研


 コロナウイルスの感染が広がって、りゅうくんは、ずっとおばあちゃんのうちにお泊りをしています。
 子どもの日、お父さんとお母さんから電話がかかってきました。
「元気?」
「お父さんとお母さんも元気で頑張ってるわ。自粛がまた伸びちゃったみたいだけど、もう少し、頑張ろうね」
と、お母さんがいいました。
「うん」
 りゅうくんは、ちょっぴり元気がありません。すると、お父さんが、
「今年も、庭で、このぼり上げていたんだぞ。でも、見れなかったけどなあ」
と、残念そうにいいました。
「大丈夫。ぼく、おばあちゃんと大きなこいのぼり作ったんだから」
「そうか」
 お父さんが、
「じゃあ、うちのこいのぼりは、もう、しまっていいね」
と、いいました。
「だめだよ。今年は、もう会えなくなっちゃうじゃないか」
 こいのぼりが、高いポールの上から、
「ぼく、りゅうちゃんが帰ってくるまで、ここで待ってるんだから」
と、いいました。
「ほんと?」
「ほんと。待ってるよ」
 だから、りゅうちゃんのうちでは、まだまだこいのぼりが元気に泳いでいます。

(作者のことば)
自粛が伸びてしまいましたね。でも、コロナが収まるまで、頑張ろうね。

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