「福」 はらまさかず

 もっちゃんが学校に行くと、校門の前に太った猫がいました。
 大福です。
 もっちゃんは、急に元気になりました。
 大福も、もっちゃんに気づき、のっそり起き上がります。そして、いっしょに教室に入りました。
 もっちゃんは約束通り、大福に『福』の字を教えてあげました。でも、大福はうまく書けません。
 「いい。まず、カタカナのネ。それから漢字の一、口、田んぼの田。ね、一つずつやれば、福になるよ」
 もっちゃんがいいました。
 大福は、いっしょうけんめい書きました。
 でも、書けません。一と口と田は、なんとか書けましたが、ネが上手く書けません。
 「ネは、ネコのネだからネ。大福なら、ぜったいできるよ」
 もっちゃんがいいます。
 でも、やっぱり書けません。
 「もう少しだよ」
 もっちゃんがいいました。
 
 みんなが授業をうけている間も、大福はずっと字の練習をしていました。でも、みんなが帰る時間になっても、やっぱり書けません。大福は、明日も学校に来ようと思いました。

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