死にたい夜に効く話【11冊目】『チーズはどこへ消えた?』スペンサー・ジョンソン著;門田美鈴訳
世界的超ベストセラー『チーズはどこへ消えた?』を教えてくれたのは、大学時代に知り合った人だった。
知り合ってしばらくしてから、初めてこれまでの自分自身の話をしてくれた。
普段すごく明るいその人からは想像できないような苦労をしてきたことに驚いた。人はなんて見かけによらないんだろう。
そして、その人の人生の進め方は、わたしが出会ってきた誰とも違っていた。それは、わたしだったら不安で仕方なくなるような選択だったから。
でも、その人は全く先のことに対する不安を感じている様子がなかった。
ある時、一冊の本の話をしてくれた。
その本は人生を変えてくれた。自分はこの本に書いてあるように生きていきたい。
話をするその人はすごくいきいきとしていた。
「人と違うことはしないほうがいい」「安定が一番」
それまで自分は、そんな周りからの「そういうもんでしょ」って考え方に違和感がありながらも、なんだかんだその通り生きていくんだろうなと思っていた。
むしろ周りの考え方の波に乗れていない自分に罪悪感さえあった。
あの日、その人が話してくれたことは、現状から飛び出したいんだけど飛び出せないような、そんなモダモダした感情を抱きながら生きていた自分にとって衝撃だった。
今の自分が、先行き不透明でもあっけらかんとしてたり、チャンスが来たら後先考えずに突っ込んでいけるようになったのは、あの人の影響な気がする。
目の前で、そんな生き方をして上手くいった人を見たっていうのもあるけれど、「今」やりたいことに真剣に向き合って、自分の意思とか直感に従って行動している様が、なにか、自分の人生の舵は自分でちゃんと握っている感じがして、かっこよくてキラキラして見えた。
まぁおかげで、「この先どうするの?」「やめといた方がいいよ」と心配されたり、怪訝な顔をされることが多くなったけど。
この本がいたるところで紹介されてたり、売られたりしているのを見るたびに、内容より先にあの人のことを思い出す。
今頃、どこで何をしてるんだろう。
〈参考文献〉
スペンサー・ジョンソン著;門田美鈴訳『チーズはどこへ消えた?』扶桑社、2000年