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死にたい夜に効く話【13冊目】『アナザー修学旅行』有沢佳映著

ああ…鹿に会いたい…。

今年はそんなことをぼやき続ける秋だった。
いや、行きゃいいんだけどね。新幹線使えば京都奈良ならわりとすぐだし。
でも修学旅行生の集団と被りそうだしぃ、とかだらだら渋ってたら冬が来てしまった。

鹿と言えば修学旅行でしょ。ということで、今日は修学旅行を題材にした小説を。


主人公の中3女子・三浦佐和子は、修学旅行を目前に足を骨折してしまい参加できなくなってしまう。が、参加しないとは言っても、学校には行かなければならない。
彼女のほかにも、居残りの生徒は六人。それぞれが色々な理由で参加できなかったり、参加しないことを選んだ。
普段、関わることもそんなにない、タイプが違う七人が同じ教室で過ごす三日間の、ちょっと風変わりな青春小説。

この作品の存在を知った時は感動した。
修学旅行っていう、学生時代の一大イベントを盛り込んでくる小説や漫画は数あれど、「行かなかった側」の青春を書いた人ってもしや初めてじゃない!?
ありそうでなかったところをついてくる題材を持ってこられると、テンション上がっちゃうのはわたしだけではないはず。

それにしても、主人公の女の子は自分のことを「普通」と思っているけれど、うまく立ち回って、学校生活をエンジョイできているタイプ。言ってしまえば八方美人。普通のレベル高くないか?

すぐ周りの人をランクづけして、自分の立ち位置を把握しようとするとことか。
中高独特の制服や持ち物に関するローカルルールを気にしてるとことか。
自分の意見よりも、周りの反応ばかり気にしてるとことか。

めっちゃ、中学生っぽい。

ってのが、今の自分の正直な感想。

でも、大人から見たら、そんなこと、と思うような些細なことが、
制服の袖、まくる・まくらないとか、どっちでもええやんって思うようなことが、

ちょっとした一言、ちょっとした行動一つで、あっという間に学校での自分の立ち位置や過ごしやすさ変わってしまう。

四六時中、学校っていう小さい箱の中に、思春期っていう微妙な時期に、色んなタイプの人間が押し込められて(中学なんて特にそう)生きていかなくちゃならないなんて、

コミュ力低い人間にとっては、まさに無理ゲーよ。

なんで日本の中学のシステムって、こんなに生きづらいんだろう。


まぁ、この作品はわりと淡々としてて、そんなにドロドロしてない方だと個人的には思う。
自分としては、もっとドロドロしてくれても全然よかった。好みの問題ですな。

読んでるうちに、自分の修学旅行に行った記憶が蘇ってノスタルジーに浸れるかと期待もしたが、びっくりするぐらい記憶が出てこない。おかしい、確かに行ったはずなのに。
やっぱりベタな修学旅行コースを観光して、新たな思い出を刻みたい!
とは思うものの、
最近寒くなってきたしぃ、とか言ってたら、気づけば春になってたって、っていう未来がくる気がしてならない。

〈参考文献〉
有沢佳映『アナザー修学旅行』講談社、2017年