見出し画像

死にたい夜に効く話【15冊目】『RDG レッドデータガール』荻原規子著

冬になると、『レッドデータガール』が読みたくなる。

学生時代の冬休み。石油ストーブの前で丸まって、当時出ていた全6巻を一気読みした。
午前に行った近所の本屋でなんとなく、1巻だけ読んでみるかーと思って買って読んだら、続きが読みたくなって、昼過ぎにまた本屋へ出かけ、夕方にまた続きが読みたくなってまた本屋へ出かけ、結局、真冬の寒い中、一日で家と本屋を自転車で3往復することになった。
最初から全巻買っときゃ良かったじゃん!って話なんだけど。


荻原規子さんといえば、古代の日本を舞台にしたファンタジー『空色勾玉』から始まる勾玉三部作で超有名。おすすめの日本のファンタジー小説〜的な検索をかけると、大体最初に出てくる。日本の神話・歴史をベースにしたファンタジーの登場は、当時画期的だったのだろうし、恋愛要素が入ってくるとこも人気な理由な気がする。

打って変わって、『レッドデータガール』は現代の日本が舞台のファンタジー。とは言っても、巫女とか山伏とか陰陽師とか、日本っぽさを活かしているとこは健在。学園ものでもあるってこともあってか、かなりとっつきやすい内容なのではなかろうか。

神社の一人娘である泉水子は、超がつくほどの箱入り娘。家と学校の往復だけするような生活をしてきて、携帯電話(この頃はまだスマホは登場していない)もパソコンもろくに触ったことがないような女の子。
ある日、父の友人の息子・深行が連れて来られ、泉水子の家に住み、泉水子が通う中学に転校してくることになる。そんな設定、ここでラブロマンスでも始まりそうなとこだけど、深行の泉水子へのあたりは強い。わざわざ名門私立を辞めさせられてまで、強制的に連れて来られてんだから、まぁ無理もないでしょう。それにしても、クソガキ生意気な男の子っぽさがすごいけどね。

そんな相性最悪の二人に更に試練。なんと、高校は二人とも東京の高校へ通えと親たちからのお達し。大人たちの思惑から逃れようとする二人だが、不可思議なことが起き始めて…

正直、1巻だけ読んでも、なんのこっちゃ感がすごい。1巻が中学編、2巻以降が高校編になるわけだけど、1巻は序章みたいなもんじゃないか?これ、最後どこに着地すんの?って気になりだすと、あれよあれよと、気づけばわたしのように全巻揃ってしまうことになる。


終わってしまうのが惜しくて、ちょっとずつ楽しみに読んでいく本もあれば、ノンストップで読み切ってしまう本もある。
自分としては、荻原作品は圧倒的に後者。他のシリーズの作品でも、時間なんて忘れてぶっ通しで読んで、一冊終わったら、はい次!とガンガン読んでしまう。
読書に限った話ではないけれど、時間も忘れるぐらい集中して何かをする時間は、ストレス解消にもなっていた。

『レッドデータガール』を夢中で読んだあの日は、自分にとって楽しかった思い出として焼きついているんだろう。

集中力も使える時間も、学生時代の特権ですな!…と言いたいところだったけども、

去年だったか一昨年だったかの年末に、図書館で借りたシリーズものの小説一気読みして、正月早々、本屋で文庫本全巻買ったんだった。そして今、その本たちがわたしの目の前にある本棚をさらに圧迫させているんだった。

社会人になっても、やってること一緒じゃん。


〈参考文献〉
荻原規子『RDG レッドデータガール: はじめてのお使い』角川書店、2011年