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本に関するコラム
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#読書

藤田莉江写真集「クラムボン101」あとがき

rememberという単語には「思い出す」と「覚えている」の二つの意味があると習ったけれど、本当…

面白くて退屈な

『阿房列車 』 内田 百間 旺文社文庫 内田百間のいいところは、ものすごく鋭敏で不気味な小説…

言葉と意味についてのあれこれ

その昔、演劇青年だった。高校の頃から演劇部に所属し、飽き足らず別劇団も作り、大学に入って…

破天荒のディテール

南方熊楠が好きで、関連書をよく読む。 偉そうに「南方熊楠が好きで」なんて言ってるが、実際…

物語は終わらない(終わらなくてよい)

昔、コナン・ドイルのシャーロック・ホームズ・シリーズに熱狂した頃、新潮文庫から全10冊で出…

将門を読む

1976年にNHK大河ドラマとして放送された『風と雲と虹と』を、小学三年生の僕は親と一緒に、よ…

石垣が外れる

大切なことは目に見えないんだよ、と小さな王子が言ったから(正確には言ったのはキツネ)、なんかみんなそれがすごく大事なことのように思っているが、もちろん目に見える大切なこともたくさんあるわけで、こういう過剰な強度を持つ言葉はむしろ警戒をしなければいけないと思う。 (なんて書くと貴様は星の王子が嫌いなのかと言われそうだが、十年ほど前、池澤夏樹訳を皮切りにザクザク出た新訳を片っ端から買って読み比べたくらいには好きな話です。) 『星の王子さま』 サン=テグジュペリ/池澤夏樹 集英社

尼崎

出産間近の女性という、普段はあまり接点のない層の人と、少しだけ会話する機会があった。 他…

一分前まで猫だったもの

よしもとばなな『アルゼンチンババァ』読了。短いが端正で美しい小説。 『アルゼンチンババア…

技術について

遠藤ケイ『熊を殺すと雨が降る/失われゆく山の民俗』(ちくま文庫)を読む。 熊を殺すと雨が…

盗作とリスペクトの間

有名な話なのだろうが知らなかったこと。 井伏鱒二の『言葉について』という短編を読んでいた…

種を蒔く

高校生のときに学校の図書委員をしていて、案外誰もなりたがる人がいないもんだから僕一人だけ…

其風画白

人生解毒波止場 根本 敬 洋泉社 地下鉄御堂筋線・動物園前駅で降り、山王交差点脇の出口からJ…

オニヤンマの爆死

男の子というのはたいてい子供のころは虫が好きと相場が決まっている。その中の何割かが長じてカメラやオーディオや電車や車といったメカ系に走るところをみると、あのメカニックなフシフシしたところところがまず心を惹きつけるんじゃないかと思う。 子供というのは無責任なものだから、その大切なメカを無意識にあるいは故意に乱暴に扱って壊してしまうこともあるだろう。プラスチックや「超合金」(なつかしい)のメカは壊れたらただの部品に還元されるが、虫の場合はただの「部品」ですますわけにはいかない。