初心者の西洋絵画 旧約聖書(1)「天地創造」
西洋の美術作品、特に印象派以前の絵画作品は、聖書やギリシャ神話を知らないと、鑑賞が難しいのが多いんですよね。
わたし自身、美術に関心を持ち出して、美術展に行くようになって、痛切に感じたことです。
美術関連サイトを運営しているんですが、そこにメッセージを寄せてくれる人たちも、わたしと同じ悩みを持っていると知りました。
そこで、聖書やギリシャ神話について、美術鑑賞にあたって、最低限の知識や常識のようなものを整理して、少しでもみなさんの美術鑑賞のお役に立ったら嬉しいと思って、書いてみることにしました。
まずは「旧約聖書」です。
旧約の「約」とは「契約」
聖書にはご存じのとおり、「旧約聖書」と「新約聖書」があります。
わたしは最初、旧「訳」、新「訳」かと思ってました。
何か古い教典があって、それを何かの言語に訳した、その順番なのかと、何となく考えていたのです。(そう考えていた人、案外多いのではないでしょうか?!)
正しくは、「約」は「契約」の意味で、神と人との関係を「契約」として捉えています。古代イスラエルの思想です。
「旧約」は、イエスが生まれる以前に神と人とが交わした契約であり、「新約」はイエスが生まれた後に神と人とが交わした契約になります。
神と人との関係を「契約」として捉える。ここが日本とは随分違いますね。
日本には「やおろずの神」と言われるように、たくさんの神様がいらっしゃいますが、そうした神様と人との関係を「契約」と考えている人って、どれほどいるんでしょうかね。
民族の歴史や文化によって、宗教や信仰についてはいろいろですね。
旧約聖書はユダヤ教の教典です。ちなみに、キリスト教の教典は旧約聖書と新訳聖書です。
「旧約聖書」には、キリスト教徒以外にも馴染み深いエピソードがたくさんあるので、ファンタジー小説を読んでいるようで面白いです。
神は「言葉」と「わざ」で万物を創造
今回は、旧約聖書の冒頭「天地創造」ですけれど、これはみなさん知っているんじゃないでしょうか? 神様が1週間、というか6日間で世界を作って、7日目は休んだという話。
興味深いのは、神は「言葉」と「わざ」によって、万物を創造したのだといいます。
「旧約聖書」によれば、世界の原初の状態は「混沌」と「闇」だといいます。「旧約聖書」にはこうあります。
「地は形がなく、何もなかった」「やみが大いなる水の上にあった」
そこで、神が「光よ、あれ」と言うと、光ができて、光と闇が分かれました。
神は、光を昼と名付け、闇を夜と名付けました。これが第1日目です。
2日目、神は「大空よ、水の間にあれ」と言いました。
すると、大空が作られ、その大空を「天」と名付けました。
そして、水が大空の下と上に分けられました。2日目です。
3日目、神は「水は一所(ひとところ)に集まれ」と言いました。
それから「乾いたところが現れよ」とも言いました。
こうして海と大地ができあがりました。それから、神は大地に植物を芽生えさせました。
4日目、神は「光るものは、天の大空にあって、昼と夜とを区別せよ」と言って、ふたつの光るものを作りました。
大きい方の光るものに昼を、小さい方に夜をつかさどらせました。太陽と月ですね。それから、星をつくりました。
5日目、神は魚と鳥を作りました。
6日目は、そのほかのすべての動物・植物を作り、最後に神自身の姿に似せて、人間を作りました。
そして、人間にすべてのものを支配させたのです。
こうして神は自分が創造した天地万物に満足し、7日目は休息の日としました。7日目は「聖なる日」となり、これが1週間の起源ですね。
ミケランジェロのシスティーナ礼拝堂天井画
天地創造をテーマにした絵画と言えば、ミケランジェロが描いたシスティーナ礼拝堂の天井画が有名ですね(上の画像)。
中央部分、横に並んでいる9つの絵が、天地創造の各場面を描いた絵です(一番左端の絵が少し切れています)。
一番右端が、光と闇の分離。1日目の出来事ですね。下の画像です。
こちらは、太陽と植物の創造の場面です。神様が飛び回っています。
ヤン・ブリューゲル(子)が描いた天地創造
空中を移動しながら、万物を創造している神様。足をバタバタさせながら飛んでいるようにわたしには見えて、どことなく優しい感じがします。絵のタッチも重々しくはないですよね。
ヤン・ブリューゲル (子) は、父親も同じ名前で、しかも画家でしたので、表記するときはヤン・ブリューゲル(父)、ヤン・ブリューゲル (子) と書き分けます。
1601年、ベルギーのアントワープで生まれ、幼い頃から父の元で絵画を学びました。
まとめ 神が創造したもの
1日目 光と闇 昼と夜
2日目 大空と水
3日目 地上と海 植物
4日目 太陽と月と星
5日目 魚と鳥
6日目 地上の生き物と人間
7日目 天地万物を完成させ休息
次回は「アダムとエバ」を解説します。
※間違い、解釈の違いなどのご指摘、歓迎です。
※画像はWikipediaより引用しました。
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