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日本国神話【弐】 黄泉(よみ)の国 R&Bバンドオヤジの日本神話小説

かねがね小説を書きたいと思っていた。何を書こうか悩んだとき、近年の自分は神話に関心あることに気づき、日本神話をもとに書くことにした。今回は2回目。死者が住む「黄泉(よみ)の国」が舞台だ。

登場人物のキャラ構築とか、まだできていないのは自分でも分かっている。これから書きながら勉強していきたい。

自分の頭で考えたセリフを自由に登場人物に言わせていると、「小説を書くって面白いなあ」と実感する。(話のもとになっている「古事記」には、ここにわたしが書いたようなセリフはない)

タイトル写真は、島根県松江市東出雲町にある黄泉比良坂(よもつひらさか)。伊邪那岐命はこの入り口を通って、黄泉の国へと入った。

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(前回までのお話)
高天原(たかまのはら)から於能凝呂島(おのごろじま)に降り立った伊邪那岐命(いざなぎのみこと)と伊邪那美命(いざなみのみこと)のふた柱の神様は、やっつの島、大八島(おおやしま)と呼ばれるいまの日本国を産んだ。

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神羅万象の神々を産んだ伊邪那美命

「伊邪那美よ、おかげで国土はできあがった。でも、いまのままでは少々物寂しいのお」

「わたくしは美しい自然が好きです」

「うむ、それはいい」

そこで、ふた柱は自然を作り出す神羅万象の神を産むこととした。石・木・海・水・風・山・野などの神々を次々と産んだ。

「伊邪那美よ、わたしたちが産んだ神々で国土は潤ってきた。そなたにも感謝するぞ」

「有り難うございます」

伊邪那岐命の言葉どおり、日本の国土は豊かな自然が育ってきた。

伊邪那美命は最後に、火の神様をお産みになった。

ところが、炎となって産まれ出た神様の火は、母親である伊邪那美命にも移り、伊邪那美命は大火傷を負って亡くなってしまったのだ。

亡くなったものは、死者の世界である地下の「黄泉(よみ)の国」へ行かねばならない。

伊邪那美命は黄泉の国へと旅立った。

愛おしい妻を黄泉の国に迎えに行く

愛おしい妻を失い、悲しみにくれる伊邪那岐命。

「再び、ともに暮らしたい」

そう思い続ける伊邪那岐命は、伊邪那美命を連れ戻そうと黄泉の国へ行く決心をした。

地下に降り、闇の中をようやく黄泉の国の門にたどり着いた。

夫が迎えに来たことを知った伊邪那美命は、黄泉の国の御殿から出てきて門に走り寄り夫と会った。

「おお愛しい伊邪那美よ、あなたを迎えに来たのだ!」

「死んでしまったこの身を連れ戻してくださるとは、何とお優しいお方」

「さ、いっしょに戻ろう」

「それはできないのです」

「なぜ?!」

「わたしはすでに黄泉の国の食事をいただいてしまったのです」

黄泉の国の食事をとると黄泉の国の住人となり、もうもとの世界へは戻れない。

「ああ、なんということ!」

「せっかくお迎えに来てくれたのですから、何とか戻れるよう、黄泉の国の神様に相談して参ります」

「ぜひ、そうしてくれ!」

「ひとつお願いがあります」

「何だ?」

「黄泉の国の神様と相談している間、決してわたしの姿を見ようとしないでください」

「もちろん約束しよう!」

伊邪那美命はくれぐれも自分の姿を見ないよう、伊邪那岐命に言い残し、黄泉の国の神様と相談をしに御殿の中へと入っていった。

約束を破った夫に妻が怒る

伊邪那美命が御殿に入ってから、どれくらいの時間がたっただろう。

なかなか戻ってこないので、伊邪那岐命は気が気でない。

とうとう待ちきれずに、暗闇の中、自分の髪にさしていた櫛から歯を1本折って火をともし、伊邪那美命の姿を探そうと、御殿の中に入った。

すると、そこで目にしたのは、恐ろしい姿となって横たわっている伊邪那美命の姿であった。

からだ中に蛆(うじ)がわき、頭、胸、腹などやっつの部分から雷神が生まれ出ている。

伊邪那岐命は愛する女性のあまりの変わり果てた姿に恐れおののき、その場から逃げ出してしまった。

自分の姿を見られた伊邪那美命は「決して見ないでと約束してくれたのに、どうして見たのでしょう。このような姿になっているわたしをご覧になったとは、よくもわたしに恥をかかせてくれました」とお怒りになる。

伊邪那美命は、黄泉の国で働いている女性の神様たちに、逃げていった伊邪那岐命を追わせた。

逃げる伊邪那岐命は、女性の神様たちが追ってくるのを見ると、自分の髪飾りをはずして、神様たちに向かって投げつけた。

髪飾りが地面に落ちると、たちまち山葡萄(やまぶどう)の実へと変わった。

追ってきた女性の神様たちは山葡萄の実を見つけると、むさぼって食べ始めた。その間に、伊邪那岐命はさらに遠くへ逃げることができた。

伊邪那美命は女性の神様たちが山葡萄の実を食べるのに一所懸命で伊邪那岐命を追わないのを見ると、自分の体から生まれた八柱の雷神たちに多くの軍勢を従わせて、伊邪那岐命を追わせた。

今度は雷神たちが追ってくるのを見た伊邪那岐命は懸命に逃げる。

黄泉の国と現世との堺である黄泉津比良坂(よもつひらさか)までたどり着いた伊邪那岐命は、近くの木になっていた桃の実をもぎとり、雷神たちめがけて投げつけた。

すると、雷神たちはことごとく逃げ帰ってしまった。

桃の実には邪気を払い除く力があるからだ。現在でも「桃の節句」を祝うのはそのためだ。

一日に千人殺して千五百人産む

雷神たちも返って来てしまったので、伊邪那美命はついに自分が伊邪那岐命を追うことにした。

髪を振り乱して夫を追いかける伊邪那美命。

黄泉の国と現世との堺まで逃げて行った伊邪那岐命は、大きな岩でその堺をふさいでしまった。

追いついた伊邪那美命は、岩を隔てて叫んだ。

「約束したのに、どうして姿を見ようとなさったのです」

約束が破られたことを悔しがった伊邪那美命は、岩の向こうにいる夫にこう告げた。

「愛しい夫よ、あなたは約束を破りました。わたしはあなたの国の人を一日に千人殺してしまいましょう」

これを聞いた伊邪那岐命は、こう返した。

「愛しい妻よ、おまえがそんなことをするならば、わたしは一日に千五百人を生もう」

それ以来、一日に千人死んで、千五百人が生まれるようになった。

これは一日にたくさんの人が死んでも、それより多くの人が生まれ、国が栄えることを物語っている。


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