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わさびと日本人

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世界文化遺産ともなった和食に欠かせないわさびですが、全国津々浦々で日本人がわさびを食すようになったのは意外と最近のことなのです。身近だけど知らない歴史を楽しみながら紐解いて行きま…
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#静岡

一大革命、粉わさびの誕生物語

 前回、大阪への握りずしの定着と、長野や山陰などの地域へのわさび栽培の広がりを見てきた。  しかし、それでもわさびの産地は限定的である。今でこそスーパーの野菜売場にいけば生のわさびが売られていたりするが、当時の輸送体制では、全国津々浦々というわけには行かないだろう。  そこで不可欠なのが、粉わさびの誕生である。 粉わさびがお茶どころ静岡で生まれた必然性 粉わさびの誕生を知るために不可欠な資料が『小長谷才次伝』(1964年)である。静岡県山葵漬工業共同組合及び静岡県山葵粉

わさび栽培法の確立が握りずし誕生を可能にした

なぜ、わさびの名産地といえば静岡なのか?  わさびの産地といえば静岡。お土産売場では、様々なわさび関連商品が売り出されている。しかしなぜだろうと、疑問に思ったことはないだろうか。  静岡市から安倍川沿いに車で北へ約30キロ、支流沿いに道を分かれて溯ったところが静岡市葵区有東木(うとうぎ)地区で、わさび栽培発祥の地という石碑が立っている。慶長年間に自生していたわさびを村人が湧水地に植えたところ繁殖し、栽培方法が確立されていったという。  慶長12年(1607年)に駿府城に