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ザ・文系な私が読む理系の話〜林要『温かいテクノロジー』〜

かおりさんへ

こんにちは。
大人の自由研究ね〜。私も自由研究はあんまり好きじゃなかったな。なんか旅行記的なものを書いてお茶をにごしてた記憶があります。

そんなことを考えつつ、図書館の新刊コーナー見ていたら、ふだんはあまり食指の動かないタイプのこの本に出会いました。50万円ほどのお高いロボット「LOVOT(らぼっと)」が表紙にいらっしゃるGROOVEXのCEOである林要の『温かいテクノロジー』。

たまには自由研究的な気分で違う種類のものを読んでみようというくらいのつもりで読み始めたら……。いやあ、おもしろかった。メモしておいてあとでゆっくり考えたいことがたくさんありすぎて、思わず付箋を貼りながら読んじゃったわ。

著書の林さんはトヨタ自動車に勤めたあとソフトバンクの企業内学校の外部第一期生としてあの!Pepperの開発プロジェクトに携わるの。そこでいろいろな気づきを得るんだよね。

Pepperをフランスに連れて行ったとき、Pepperはまだ日本語の会話プログラムしか搭載してなくいなくて、仕方がないから「人とハグする」体験を重視したプログラムを組み入れたんだって。この作戦がうまくいって、フランスの人たちはハグするたびにPepperが喜ぶ姿に夢中になった。

最初遠巻きに見ていた人たちが、ハグに応じてくれるだけでなくキスまでしてくれるように。「正しく起動できなかったPepper」を応援する人まで出てきて、そんな人たちを見ながら林さんは「利便性を提供することだけがロボットの存在意義ではないのではないか」と考え始めます。

また、高齢者福祉施設では林さんの思いもかけなかった要望をされるの。ご高齢の人って自分が話したいことを話す傾向があるから、Pepperの回答が少しずれていてもあまり気にせず楽しそうに会話をしてくれたんだって。

で、最後に「Pepperがもっとこうなってくれたらいいという希望はありますか?」って聞いたら、「手を温かくしてほしい」と言われたそう。手に体温を求めるのはコミュニケーションをする相手として、Pepperに温かみのある存在でいてほしいと思ったのかもしれないと気がついた。そのあたりから、今までになかった価値観を持つLOVOTへの構想を考えていくことになったんだって。

ちょっとプロジェクトX感があるからか、数Iで数学とはサヨナラし、化学は1回目の授業のmolで挫折したザ・文系な私が読んでもわかりやすかった。「承認欲求は人間が助け合うために育まれたもの」とか「ポンコツさが愛と想像力を育む」とか「感情とは、相手の反応を見た自分の主観」とかね、言ってみれば社会科学的なテーマををエンジニアの観点で解説してくれていたところも新鮮だった。

テーマ自体が結構おもしろくて、でも視点がザ・理系なので、読み落としてしまったヒントがあるんじゃないかという気になってしまって、何度も読み返してみたい本になりました。

どうしても、好きな本ばかり読んでしまうクセがあるんだけど、たまにはふだん読まないタイプの本も読んでみるもんだね。自分で新しい分野にはなかなかチャレンジにしにくいから図書館の新刊コーナーはチェックしないとね!では、また。

2023年8月25日
やすこより


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