観に行ったよ記録:ミュージカル「おとこたち」

藤井隆氏にどうしても会いたくなったので、「おとこたち」のチケットをとった。
舞台の観劇は何年ぶりだろう。出演することも含めて劇場に足を運ぶことは極端になくなっていた。

パルコ劇場は佐々木蔵之介氏のひとりマクベス以来なので、実に8年ぶりだった。
リニューアルしてからはこけら落としの「大地」をオンラインで観た(これも藤井隆氏が出てたな)が、扉が開いていたのは初めてみた。

渋谷パルコに、お隣のほぼ日曜日に、あんなに行っているのに、知らない扉が開いていてワクワクした。劇場という空間への誘い方があまりにも見事。

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過去の「おとこたち」は見たことがない。名前は知っている程度。
そして小劇場でやる「おとこたち」というタイトルなので、ダメなおとこたちの話なのは想像が容易。
これはひどい偏見だな。でも過去演の出演者に用松亮さんがいて確信した。これは大変褒めている。この人はめちゃくちゃ芝居が上手いのだ。
過去演出助手としてついていた演出がハイバイ大好きマンがいた。私自身はみたことがなくても、ハイバイに多大なる影響を受けた彼の演出からも、それとなく嗅ぎ取っていた。

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4人のおとこたち、それぞれの人生をみる。ただそれだけの話。
ミュージカルという割にはあまりにも日常。
私がミュージカルに触れている数が少ないだけかもしれないが、ミュージカルってもっとドラマティックなイメージがあったんだけど、歌の入り方も異常なまでに日常会話ベースだったんじゃなかろうか。
そして、すごい好き。大原櫻子さん演じる純子のソレは異常なまでにキュートだった。恋です。かわいい。(あとでちゃんと歌ったのも上手すぎて好き。恋。)

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誰の人生に共感するでもなく、客席から傍観するだけ。
でもいつの間にか誰かに自己投影している。
自分はこんなジジイになりたくないな。周りの人がこんなんなっちゃったらかなしいな。自分だったらこのシチュエーションどうする?
自己投影したところで、実際その状況になってみないとなにもわからない。だから傍観するだけ。強くてニューゲームはできない。

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twitterで観た感想に「歌が上手かったり顔が良すぎると、ダメなおとこたち感が薄れる」とあったが、まさしくそうだと感じた。秀ですぎてダメなおとこたちポイントが加点されない。
たぶんなんだけど、過去演は劇場がもっとドロドロのグチャグチャになっていたと思う。
今回は歌声や音楽の持つ明快さが打ち勝っていたように思う。スパーンとした歌声で湿っぽさが薄く感じたのかなぁ。
とはいえ芝居も爆上手なので、ちゃんと各キャラクターのダメさも拾えているし…

う〜この感覚なあ〜わかるのに伝えられないやつか〜

そういう意味でベストアクトは女性陣になっていくのかもしれない。岩井さんの感じている、女の強かさというものがしっかり表現されていた。

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個人的に目も当てられなかったのは、鈴木の人生だった。
帰る場所がなくなってしまった虚しさは計り知れない。でもそれは、わかり合おうとしなかった自分のせい。全部。全部。全部?

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二幕、治安の悪い藤井隆氏の演技がみられてよかった!(どういう感動の仕方よ)
「俺と喋って俺と喋って俺と喋って」はゾクゾクした。すごい。

今回氏が演じた津川役を、初演で演じていた用松亮さんと実は共演したことがある。前情報少なめで行ったので、幕間にパンフレットを読んでひっくり返ってしまった。
最後まで通して観て、用松さんが演じた理由もよくわかった。二人の共通点はウソみたいに器用。薄っぺらい言葉だけど、そうとしか言えなくてさあ…
どこかで観られないかな?それくらい津川を演じている用松さんを観てみたいと、氏を通して感じることになってしまうとは。
完全に個人的な感情だし予想外だったな…ここの点と点が線になることあるのね…

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あとは演出、やっぱり上手だな。
過去唯一観た「カーテン」という作品でも、国境の表し方がありきたりだけどとても素敵でドラマチックだったことを覚えている。
演技指導とかより空間の使い方を観てしまいがちだよね〜
輪廻転生とかループする場面が出てくる作品としてはあの舞台づくりはピッタリ。
人生が回りながら音を立てて崩れていくゲームセンターの鬱屈とした雰囲気の表現がとても良かった。印象的なシーンなので特筆されやすいとは思うんだけど、あのシーンをきっかけにまたひとつずつ崩れていく様が惨めでたまらなかった。

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実は、個人的にいろいろ重なった公演だった。
・自分で選んだ座席に暗幕がかかっており、スタッフさんに聞いたら4列前の座席になった
・藤井隆氏の演じていた役が、初演組で唯一知り合いの用松亮さんが演じていた役だった(推しを観にいったら、超すげえ芝居のうまいおじさんがやっていた役を推しがやっているでござる!?は!?という衝撃が本当にすごかった幕間に気がつくべき情報ではなかった)
・地元の名前が出てきて笑うしかなかった(戯曲買いました)
・そういえば私が過去唯一みた岩井演出作品が神保町花月「カーテン」で、芸人×岩井秀人が勝手に定着してしまった(演出がとても好き)(チケットとったあとに思い出した)

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劇場から遠のいた私を静かに手招きしたのは、どうしようようもない「おとこたち」だった。

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