見出し画像

幽霊が出る結婚式場の話

幽霊の存在を信じますか?私はこの仕事を始めてから信じざるを得なくなりました。幽霊は人の集まる場所に「出る」というのはよく聞く話。学校や遊園地、お芝居をするような会館…そして結婚式場も例外ではないようです。だいたいどの式場も「そういった話」は持っているのですが今回お話しする式場はまさに「オバケ大運動会」状態。
3階建の小さな専門式場。1階が披露宴会場・2階が控え室や写真室・3階がチャペルという作りでした。

1階の披露宴会場で全スタッフが集合してミーティングをしていると上の階を走り回る足音がする、なんてことは日常茶飯事。
お客様が内覧中に「今日は他のご家族連れもいらっしゃるんですね〜」聞けば幼稚園生くらいの女の子が階段付近で遊んでいた、と。調べてもそんな来館者はいない…。
厨房からお皿の割れる音がして慌てて行くもそんな形跡はなかったり…閉めたはずの重厚なチャペルの扉が開いている、なんてことも。

とにかく霊障がおさまらない。私もその式場へ行くときは毎度「何事も起きませんように」と祈っていました。

その日も祈りながら開宴し、何事もなくお開き。ホッと胸を撫で下ろし、私は司会台で帰宅準備をしていました。時刻は夜8時頃だったと思います。列席者がいなくなった広い披露宴会場では数名のスタッフが清掃を始めようとしていました。そのとき、ふと新郎側の親族席が視界に入ったのです。新郎様のお父様は他界されていて、お席には間もなく下げられる陰膳が…

その瞬間、お席の後ろにあった庭に繋がる大きなガラス扉が

ぶわっ

と全開になったのです。

その式場自慢の、壁一面の大きなガラス扉。普通はスタッフが二人掛かりで開けるようなしっかりした造りです。風もない中…新郎様お父様のお席に向かうように開きました。不思議と怖さはなく、でも何か特別な力を持って開いたように私は感じました。新郎様お父様もきっとご列席だったのでしょう。息子さんの立派に成長された姿をご覧になって満足気にお帰りになる姿が見えたような気がしました。

次回予告
『コロナ渦の披露宴でお酒を隠匿した父』

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?