殺人出産 村田沙耶香

空前の読書ブーム。ということで昨日に引き続き今日も本を読む。前々から気になっていた村田沙耶香さんの殺人出産。

村田沙耶香さんはコンビニ人間で知り、とんでもない感性の持ち主であると衝撃を受けた。コンビニ人間は共感する部分も多く、私的には今年1の面白かった小説になるはずだった。
この本と出会うまでは。

殺人出産は4本の短編集の1本目。ページ数でいうと100ページ程度の短い作品である。にも関わらず濃い。そして絶対にありえない設定のもはやファンタジーとも思えるような作品であるのに、なぜか現実味がある。そこが面白い。

ストーリーというか世界感の説明だけさせてほしい。10人産んだら1人殺すことのできる法律が日本に新たなに採用された。(もうこの時点で読みたくなるだろう)世の中の女性は美容によいと蝉でできたスナックを食べ(気持ち悪い)昆虫食がスタンダードな時代である。(とても気持ち悪い)殺人を犯す人間は産人として崇められ(理解できない)殺される人間は死に人として死んだ後は親が感謝される(信じられない)

とまあこんな感じの世界感の話である。どうやっても現実味のない話である。だが妙な納得感があるのだ。まあそのうちこうなることもあり得るのかもなんて読みながら考えてしまう。そして読み終わったあと、我に帰るのだ。そんな訳ないじゃん。

想像をしていた残虐な結末や恐怖で眠れなくなるような話の展開は全くない。ただ淡々と語られる。そして読み終わったあとすごいものを読んだ。そういう気分になる。

以降若干のネタバレ注意


残虐な結末はないと書いたが、よくよく考えてみるとあの終わり方は一番悲惨で救いようがない結末なのかもしれない。
育子は正しい世界で生きるのを諦めたのか。彼女は消して流行りの虫たちを食べなかった。いなご(古い価値観)はたべれてもほかの虫(新しい価値観)は無理。古い価値観での正義のある人間(早紀子)よりだった育子は早紀子の価値観が世の中に受け入れられないものであると姉によって気付かされる。姉と一緒に古い価値観を殺しその代償として自分が産み人になる決意をする。そんな風に私は読んだ。

ほかの短編3編もぶっ飛んだ世界感の話である。1冊のページてきボリュームは少ないがインパクトは初めて海外旅行に行っていろんな体験をしたくらい大きい(わかりづらい)

村田沙耶香さん、ますます気になる作家である。


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