落書きも侮れない

 街の落書きには、ネット上の投稿のようにタイムスタンプなどは見られない。書かれている絵や模様が提示する対象やそれの色あせ具合から時代を推察するしかない。
 ふとした落書きに心を奪われることがある。
 俺が今もたれている壁にはこう書かれている。

 毎日が腐っていて
 何の役にも立たない身体は泥水のように
 手を伸ばすこともせず
 これが自分の運命だと
 切腹する妄想ばかりを考えている
 ここで終わらせなければと
 真夜中2時に起きる些細な勇気は
 あの頃恨んでいた大人が
 カレンダーをめくり起きる風によって消されていく
 自分の死を待つ二人称の存在によって
 こんな状態で生きることを選ぶのかと
 自らを笑い呪っている
 怒ることもせず
 部品ばかりを積み上げる労働に従ったあの日から
 二十代の魂は壊され続けているのだ
 すこ〜〜〜しずつ♡

こういう落書きに救われる時は人生でたまにあるのだ。

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