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イトバナシでチョコバナシする話③

チョコレートとは適度な距離感でやってきた。そんな自分がチョコまみれな日々を過ごせているのはなぜだろう。それは工場長が思い描く「チョコバナシ」を追いかけることが面白かったからかもしれない。

工場長というのは、就職した会社の副代表のすぎかわさんのことで、元々は大学で細胞膜の研究をしていた人だ。工場長は、五條にいるとき大体、腕を組みながら何かを考えている。ちなみに、作る料理が最高に美味しい。

こちらが工場長


こちらがまつもと。友人が撮ってくれた。

「お菓子作り好きだったっけ?」と聞かれることがあるが、チョコレート作りは完璧な素人だ。「まっさらな方が染まりやすくない?」と謎の自信はあった。チョコレート作りを頭と身体でわかるにはかなり時間がかかると、新たな学問の扉を叩く気持ちで始めた。

カカオ豆からチョコレートを作る工程は工場長に教えてもらった。まずわかったことは、チョコ作りの世界にも専門用語があるということ。

一つずつ、語彙を増やす必要があった。たとえば、カカオ豆の中からチョコレートに使えるものを仕分ける作業はピッキングという。チョコレートが完成するまでにあと何個かingが続く。

カカオ豆(左)とカカオニブ(右)
ピッキング作業。手作業でカカオ豆を仕分けていく。


知れば知るほど、気になることやわからないことが増える。こっちの世界もそうだったかと喜びながら、好奇心の良循環にいつの間にか入った。現場と現場の間で、本屋さんのチョコレートのコーナーに通ってみたり、チョコレート検定を受けてみたりした。

新しい味を感じるたびに、「味覚って何?美味しいって何?」とそもそもの所が気になった。前職で必要だった知識の中に、人の身体の構造やしくみについての学問が含まれていたためか、私はしばしば「人間にとって〇〇とは?」と考えがちである。

チョコレートをきっかけに、また教科書を開くことになるとは面白い。仕事は変わってもやることは似ている。


(一定の基準まで)頭でわかることは大切だが、(一定の基準まで)作業ができないとチョコレートが完成しない。私は物事の習得に時間がかかるタイプで、今でもチョコレートをいろんな場所につけながら、砂糖を地味にこぼしながら作業している。油断してるとメガネやマスクもチョコまみれだ。

当然、しっかり販売もしていく必要がある。販売も経験がなかったので、ゼロからの始まりだった。こちらも「まっさらな方が染まりやすくない?」という感じでやっている。現場が回るのがまず大切だとは思う。でもたまに「わからないこと」で立ち止まって向き合える環境がチョコバナシにはある。

質問すれば工場長は熱量をもって丁寧に返事をくれる。接客は代表のだてさんの熱量をそばで感じながら学んでいる。新しいことばかりの自分にとって何ともありがたい環境だ。

お店にあるジオラマ

自分なりにチョコレートとの距離感を縮めながら、工場長の思い描くチョコバナシを追いかけてきた。ただ清々しいくらいに追いついている感じはない。

工場長は、昨日も今日もパソコンを開いて、腕を組んで、何かを考えている。頻度は少ないが、たまにチョコについて話してくれることが、スッとなじんでわかる時がある。その瞬間は素直に嬉しい。

工場長らしい世界観はカカオ豆からチョコレートができお客さまに届くまでの工程ごとに、にじむ。ただ私が感じとる工場長らしい部分は、全ての中のほんの一部でしかないと思う。

最近「chocobanashiのお話会」というイベントで、工場長によるお話会が開催された。お話会を後何回、開いたら全体像は見えてくるのだろう。聞けば聞くほど姿はぼやけるのかもしれない。

工場長は面白い。チョコバナシは面白い。

カカオ豆をすり潰してお砂糖を加えてチョコになる。

2023年2月11日、チョコバナシは1周年を迎えた。イトバナシでチョコバナシする話はパート③にて、やっと季節が追いついた。

こうして工場長へのリスペクトを言葉にしていると、多分イトバナシ代表のだてさんから「私の話も待ってるよ!」とコメントが届きそうだ。

だてさんは私が「この人と一緒に働きたいから転職しよう」と思ったまさにその人。想いはあふれるので、続きの公開はどんどん先延ばしになる予感がする。

また④で会いましょう。