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絵本の蔵書(その13)「うさぎ小学校」「てぶくろ」他

 ピーターラビットより鳥獣戯画を連想させるような描写です。

うさぎ小学校
作:アルベルト・ジクストゥス 絵:フリッツ・コッホ=ゴータ
訳:はたさわゆうこ (徳間書店)

 さあ、きょうから学校です! 子うさぎの兄妹ハンスとグレートヒェンは、わくわくしながらうさぎ小学校へ。ながいお耳の校長先生が教えてくれるのは、たべられる植物や、こわい動物のこと。ときどき先生のかみなりが落ちるけれど、みんなで畑に水をやったり、たまごに色をぬったり・・・学校って楽しいな! 八十年ものあいだ読み継がれている、ドイツの懐かしくて温かい古典絵本です。(徳間書店)

 「うさぎ小学校」は、リアルに擬人化されたうさぎの絵がとても良いです。ピーターラビットの可愛らしさとは全く異なり、少し毒を含んで見える等身表現で描かれた絵が好みです。一種のカリカチュア(誇張や歪曲を施した人物画)のように見えます。

「うさぎ小学校のえんそく」という続編は所有していません。


ひとりぼっちのかいぶつといしのうさぎ
作・絵:クリス・ウォーメル 訳:吉上 恭太 (徳間書店)

 みんなにきらわれて、さみしさのあまりかいぶつは石でうさぎをつくった。石のうさぎは動かないけれど、それでもかいぶつは、幸せだった…。みにくい外見の内にかくれた、やさしく美しい心…。読後、静かな感動で心がふるえる忘れられない一冊です。5歳から。(徳間書店)

 絵も物語も最高の絵本ですが、日本版と海外版でチョイスする表紙の絵が全く違います。

 私は彼ほど外見が醜くはなく、とくに悲観するほど他人から嫌われてもいませんが、その代わり心が醜くて優しくもないので、孤独の中に生き、一人ぼっちで死んでゆくのです(大げさ)。ところでこれは一体何の寓話でしょうか。人を見た目で判断するなという寓話ですが、ルッキズムはイケメンや美女が正義で、醜い外見の者は悪というレッテルを貼ります。多くの人がそれを信じて騙されてしまいます。


おばけやしきへようこそ!
作:キッキ・ストリード 絵:エヴァ・エリクソン
訳:オスターグレン晴子 (偕成社)

 森で道に迷った女の子が一夜の宿を求めたのはおばけ屋敷。おばけたちは怖がらせようとするのに、女の子はちっともこわがりません。(偕成社)
 ちょっと地味な表紙とタイトルですが、中身は違います。センスの良い漫画家が描いたように表現力豊かでアニメ映画のような趣があり、とても楽しくて癒されるお話です。


かいじゅうたちのいるところ
作:モーリス・センダック 訳:じんぐう てるお (冨山房)

 モーリス・センダックの絵本。1963年出版。翌年、コールデコット賞受賞。世界中で約2000万部売れている。 日本では1966年に『いるいる おばけが すんでいる』というタイトルでウエザヒル出版から最初に翻訳された。このときの本文は七五調であった。(Wikipediaより) (冨山房)

 著名なスパイク・ジョーンズ監督によって映画化されるほど有名な絵本ですが、本文は単純で少なく、本当の子供向け絵本です。今改めて見直して、正直言うとこの絵本の蔵書の中では全くお薦めするに値しない本の一つです。絵本としての評価は高いですが、自分が感動する絵本と同じ賞を得ているとすると、その賞の評価そのものが信じられない気がしてきます。中身がないです。(そう感じる自分は子供心を忘れているのかも知れない)


てぶくろ 作:(ウクライナ民話)
絵:エウゲーニー・M・ラチョフ 訳:内田莉莎子 (福音館書店)

 雪の上に落ちていた手袋にネズミが住みこみました。そこへ、カエルやウサギやキツネが次つぎやってきて、とうとう手袋ははじけそう……。個性ある動物の表情が特にすばらしい傑作です。

 もっと恐ろしいエンディングを想像していた私は、心の醜い大人になっているのだろうと思いました。なんとも拍子抜けするような平和なオチですが、野生の生き物が生きるため以外に他の動物を襲ったりしないのは、じつは自然なことです。食べるわけでもないのに殺したり、商品が売れずに捨てて無駄にするのは愚かな人間だけです。


「絵本の蔵書」は、終了した「クックパッドブログ」で以前連載していた(所有している)絵本の紹介です。最終的には103冊ありました。(その20)まで続きます。古い名作絵本は、図書館に行けばたぶん見つかります。


<(ↀωↀ)> May the Force be with you.