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陸游 「晨鏡」

晨起覽清鏡  あさおきだして

       かがみをみると

有叟鬢已皤  ひげまっしろの

       おきながうつる

馘黄色類梔  きばんだかおは

       くちなしみたく

面皺紋如鞾  しわのよりかた

       かわぐつのよう

熟視但驚嘆  じっとみつめて

       ただおどろいて

初不相誰何  どちらさまかと

       たずねもできぬ

久乃稍醒悟  しばらくたって

       きがつきはじめ

舉手自摩挲  かがみのなかの

       このかおなでる

與汝周旋久  おまえとながく

       つきあってきた

流年捷飛梭  ときのたつのは

       はたおりのよう

生當老病死  このままいずれ

       おいはてしぬる

求脫理則那  のがれようにも

       そのすべはない

切勿彊撐拄  としがいもなく

       わかくふるまい

據鞍效廉頗  げんきなように

       みせてはならぬ

惟須勤把酒  ただやることは

       まめにさけのみ

暫遣衰顔酡  このしわがれた

       かおあからめる


「晨鏡」

*「黄」は衰弱した時の顔色で、「酡」は酔って顔を赤らめた色。「廉頗」は戦国時代の趙の将軍。老齢の廉頗はまだ働けることを示すため、若ぶって飯一斗と肉十斤を食べ、鎧を着て馬に乗ってみせたという。

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