ひものお兄さん(その2)

鳥取県内で最も大きな港があり、全国的に見ても水産業が盛んなエリア。
そこで半世紀にわたって干物製造を行う会社から、営業として働かないか?と誘って頂きました。
生産側に入ってみたいと考えていた私は、二つ返事で入社を決めます。
見たこともないような巨大タンクを使ってトン単位で仕入れる原料(魚)が毎朝、目の前の港で水揚げされる光景にはテンションが上がりました笑。
原料を大量に仕入れるということは、その分沢山の製品を製造します。
作業員が役割分担して魚の下処理から塩漬け・乾燥・包装(トレー入れ、袋詰め等)を行う様子は干物工場そのものです。
主な卸先は県内外のスーパーであり、大量に作ることで安定供給を実現して来ました。
昭和の時代には作業員が100人近くいたこともあり、作れば売れる状況だったそうです。

塩漬けしたハタハタを乾燥機で乾かす様子

時代が変わって「魚離れ」という言葉が出てくるようになると売上は落ち込み、働き場所として人気の無くなった加工現場は深刻な人手不足に陥っています。
高齢化が進む働き手の代わりに、国外から若い技能実習生の受け入れを開始しましたが、数年すると出身国に戻ってしまうのが現状です。

また、製造過程で生まれる規格外品の行き場はほとんど考えられておらず、袋詰めする時間や人件費が惜しいという理由から肥料にまわされます。
下処理→塩漬け→乾燥まで手をかけた製品が、問題なく食べられるのに見た目の悪さが原因で口に入らず役目を終えるのは納得がいきません。

魚離れという言葉はネガティブな意味で使われる場面が多いですが、食生活が多様化して選択肢が多くなったのだと考えることも出来ます。
外国産の魚も手に入る現代において、国内の漁業者人口・漁獲量の減少は今後も続くと思われます。
それらの変化に対し、獲り方や加工品の作り方、売り方等の工夫がなければ行き場のない余剰が増える一方です。

ずいぶん長くなりましたが、水産の現場で見えてきたこれらの課題について、私は魚に対する多面的な視点を用いた解決策を見出したいと考えています。
真面目な漁業や加工の技術がバージョンアップされながらも受け継がれ、日本の魚食文化を残していくことが目標です。

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