8耐より疲れた帰り道
2024年の「真夏の祭典」FIM世界耐久選手権シリーズ第3戦、”コカ・コーラ”鈴鹿8時間耐久ロードレース第45回大会の帰り道は、東海道新幹線のトラブルに巻き込まれ、結局月曜のうちに帰宅できず、名古屋市内でも宿が取れなくて、結局始発狙い+宿代高騰を鑑み大垣までのオーバランを余儀なくされてしまった。
副題。じゃあJR東海はどのように誘導すればよかったのか。
帰宅時には「JR東海が必要な情報を出してもらえればうまく迂回できたのではないか」と思うことが多数あったので、いち鉄オタの視点から今回のトラブルを振り返ってみたいと思う。小生個人の結論から言えば「名古屋駅で適切な情報を出していれば松本経由で帰れた計算。現場の混乱は理解するが、なぜ逐一正確な情報をアナウンスメントしなかった」となる。
事故当日の小生
当日は10時頃、三重県鈴鹿市、近鉄白子駅を発車する近鉄急行で移動を始めた。この電車内でX(Twitter)を開いてようやく重大なことを把握したのだが、Xは猛烈なインプレッションゾンビが湧いていて、とてもじゃないが情報収集が覚束ない状態。
なので予定通り18きっぷ旅に移行するため、近鉄の乗換改札で18きっぷにハンコを押してもらった。念のため、名古屋駅で運行情報を問い合わせたのだが「在来線は順調です」「豊橋駅も普段通り」と言われたので、住よしの冷やしきしめんを食べて、東海道線の上り新快速に乗る。
車中では車掌は「新幹線が止まってご迷惑をお掛け致します」だけで、その時点で混乱と混雑が発生していたと思われる浜松駅・豊橋駅の情報を一切口外しなかったのだ。そのせいで、豊橋駅に到着した時点で、2年間の豊橋市民生活で見たこともない豊橋駅の惨状を目にしたのだ。すでに浜松方面の列車は大混雑しており、入場規制が始まっていた。仕方なく情報収集のため豊橋駅構内のプロントに飛び込んだんだけど、そこで熱中症?と思われる人が倒れるシーンを目撃し、近くにいたお医者様と一緒に介助をすることに。これで30分ほどロス。仕方なく駅のコンコースはおろか駅の外に伸び始めた行列に並ばざるをえなくなった。18きっぱーでも関門のうえ、不幸な事故に居合わせてしまう自身の不幸を嘆くしかない。
そうして1時間ほど経過したのだが、その時点で豊橋→浜松間の突破目途がたたなく、前日までの疲労もあり体力と判断力の低下(熱中症症状がでた)を認めたため、投宿を決断した。ただ、その時点で新幹線駅は勿論、東海道線沿線の宿も厳しい状態になっていたので、金額の安さも相まって結局名古屋をオーバーランし大垣駅前のホテルに投宿することになってしまった。
JR東海(在来線)の事故対応
まず、JR東海の事故対応を批判するとすれば
会見でヒューマンエラーではないと言い切ったこと
長期化を見据え「旅行の中止または迂回」を主要駅で呼びかけないこと
運転再開時刻を甘く設定していたこと
在来線の駅が混乱していることを伝えなかったこと
1.ヒューマンエラーではなかった
ここまでの大掛かりな事故なので、事故調査委員会等の調査をまって発表するべき項目であり、事故の第一報、およびそれで混乱しているなか必死で復旧活動をしている現場にいうべき話ではない。もっと言えば、ミスをシステムで防ぐ準備をしていなかったのか、といいたくなる。正直、2005年の福知山線脱線事故に対するJR西日本の不適切対応を思い出し、JR東海の安全対策どうなっているか、と疑問に思ってしまった。当時のJR西日本は「ダイヤ厳守」を掲げ「事故やミスは個人の責任。個人がミスしないように恐怖政治」を行った結果福知山線脱線事故を起こしたのだから・・・
2.「旅行の中止または迂回」を主要駅で呼びかけない
これも下策でしたね。名古屋駅(または金山総合駅)の時点で「今日中に都内に行きたいのであれば、18きっぷであれば中央線経由を推奨します」と名古屋駅で言ってくれればまだ検討の余地もあったのに、18きっぱーのシーズンinで明らかに混むことが想定され、事態が悪化しているであろう浜松駅・豊橋駅への人流を止めなかったのは下策だと思う。
3.運転再開時刻を甘く設定していたこと
当初は昼過ぎに運転再開見込みだったのが、午前中には夕方以降になり、そして夕方には終日運転見合わせがアナウンスされてしまった。浜松駅・豊橋駅で混乱に巻き込まれた人には「午前の報道で昼過ぎ運転再開を信じ」動いた人も多数いたはず。最終的にマルチプルタイバンパーをその場解体するような事故になる以上そんな甘い運転再開見込みを出してよかったのかな、と思う。むしろ、2.の件も合わせて終始JR東海上層部の見通しが甘かったと断言する。
4.在来線の駅が混乱していることを伝えなかったこと
これについては厳しく言いたいけど、豊橋駅はあきらかにキャパオーバーになっていて、駅員の対応がまったく間に合っていなかった以上きつくはいえない。むしろ、やってくる人流をもっと手前で止めておかない限り混乱は収拾しなかったと思う。普段から本数が少なくなって、18きっぷだとここと大垣~米原の区間を睨みながらスケジューリングする区間なので、豊橋駅や浜松駅の現場は可能な限りの対応をしたと思う。
JR東海に感じる危うさ
本文中でも少し書いたけど、今回のJR東海は「福知山線脱線事故」を起こした当時のJR西日本首脳陣、特に当時「JR西日本の天皇」と呼ばれていた某氏のことを思い出していた。下記に「福知山線脱線事故」のルポを書いた松本氏のインタビューを出すが「個人の怠慢や悪意によるミス」だけで済まされるものではない。善意の作業者が真面目に職務に努めていても、避け難いエラーは起こり、巨大かつ複雑なシステムの中でそれらが連鎖して被害を拡大するというのが常識であり、「組織事故」なんですよね。
そのような組織事故が起きている状態なのに「ヒューマンエラーはない」など他所に責任を押し付ける行為は「福知山線脱線事故」を他山の石としていないと感じるんですよね。
そしてその裏には「東海道新幹線は圧倒的にシェアを持っているから、多少問題起こしても客離れとかがおきない」といううがった見方をすれば俺様商売な部分があるんですよね。あれだけの混乱を起こして、多数の乗客に迷惑をかけたのにお詫びの一言もないHPですし。
殿様商売で上から目線を感じてしまうのは小生だけだろうか?
事故を起こさない風土造り
JR西日本の組織風土は、1991年に発生した信楽高原鉄道正面衝突事故でも変わらず、恐怖政治を行った結果、多数の犠牲者を出す福知山線脱線事故につながってしまった。正直、今回のインシデントでJR東海が真摯に反省し、関係各所に謝罪しつつ、抜本的な安全対策を行わない限り、JR東海は大きな事故を起こしてしまう、と思う。特に高速鉄道を持ち、日本の大動脈となっている東海道新幹線が大きな事故を起こしてしまえば、多数の死者・負傷者を出してしまうことは容易に想像がつく。海外の高速鉄道で起こった悲惨な事例をいくつも見ているからだ。
新幹線開業60年。その間に大きな責任事故を出さず、多数のお客様を安全に運んできた新幹線への信頼が揺らぐ事態にならないよう、JR東海にはちゃんとした事故原因の追究と再発防止、その前に「安全に対する点検」を望みたい。
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