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マイナースポーツが抱える問題点/おすすめスマホジンバルOM4/オワコンになったFPVトレンド/PIDを柔道の受け身にたとえてみた/横田 淳『週刊ドローンリアルビュー』 Vol.18

今週は渋谷にいます。

渋谷 - 1


新しく生まれ変わった宮下公園パークが盛り上がっていますね〜!渋谷横丁は激混みで早速出会いの場と化しており、4Fの芝生ゾーンでは缶チューハイを買い込みグループやカップルで外飲み。このコロナで飲食店で飲む機会は大きく減りましたが、若者だけでなく会社帰りの人でもコンビニで買ってきたお酒で外のベンチや路上で飲むひとがめちゃめちゃ増えたのは面白い現象だなぁと。コンビニは飲食店の本格ライバルですね。

今週のトピックは「マイナースポーツの課題」をドローンレース視点で考察しました。僕自身課題意識をもってドローンレースに取り組んでいますが、他のマイナースポーツ団体の方と話している中で、めちゃめちゃ共通点が多いなと感じたことがきっかけです。興行とかスポーツビジネスに興味ある方は見ていただければと。

今回の動画紹介と作り方動画はもろにFPV系やっている人向けです。かなりコアな内容なので、始めたばかりの人はある程度慣れたあとに読むと理解が深まると思います。

それでは今週のメルマガです。

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                         2020/9/8
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横田 淳『週刊ドローンリアルビュー』 Vol.18


毎週水曜日発行
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今週の目次─────────────────────────────

1.今週のトピック
2.横田のドローンガジェットレビュー
3.世界のおすすめ動画解説
4.連載:ドローンのつくり方講座
5.Q&A(何でも質問回答)

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1.今週のトピック

日本中・世界中でドローンを持ってコンテンツ企画、イベント運営、撮影している著者が毎週違ったトピックで旬な話題を提供します。

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『ポストコロナでドローンレース市場はどうなるのか』

先日戦略コンサル会社より市場調査インタビューを受けました。E-Sportsを筆頭にテクノロジースポーツが勃興してきておりドローンレースもその一つと認識されているようです。市場レポートでも作っているのか、ある程度規模の大きい会社が参入を検討しているのかわかりませんが、過去の大会や各種団体について、海外におけるドローンレースの開催スキームや、エンタメとしての課題など知る限りをお伝えしました。

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2019年まで僕は大小含めて、30回以上ドローンレースを開催してきました。プレイヤーとして世界大会にも何度も参加しています。各国のレース団体とこうした議論をしたこともあります。スポンサー収入や興行としての見せ方、レースの開催スキームから運営方法まで熟知しています。

そうした背景から考えて、ドローンレースはコロナに関係なく、スポーツエンタメ市場としてまだまだ成立していません。コロナの影響を受けて、国内だけでなく海外でも同様だと思っています。多くのドローンレースメーカーが廃業、事業撤退の話が進んでいます。(世界最速パイロットのフレームで有名な中国企業はレース事業撤退とのこと)

では、このままコロナとともに衰退していくのか?

結論から言えば、僕はドローンレース市場は大きくなる未来が見えるし、めっちゃ面白いことになると確信しています。もちろん僕自身のバイアスもあるでしょう。時速100km超えのスピード体験ができる遊びに加え、教育にも産業にも繋がるドローンレースは、社会インフラとして確固たる広がりを見せるドローンの普及とともに大きくなると考えています。

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しかし、『今のドローンレース』だけではだめなのは自明です。これは2016年から2019年までレースを開催しまくっていたころから常に思っています。その上で演出を考慮したり、ルールをわかりやすくしたり、ルールブックを作り開催者を増やすための講座を開くなど様々チャレンジしてきました。ドローンレースってそもそも何?という人もいるかもしれませんが、以下は、マイナースポーツに共通する課題だと思いますのでご自身の興味対象に置き換えて見てもらえればと思います。


〜圧倒的に競技人口が少ない〜

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世界で最も競技人口が多いスポーツはバレーボールで5億人、バスケットボールで4.5億人テニスで1億人と言われています。バレーもバスケもボールさえあれば始めることができて年齢層も幅広いです。ゴルフは6000万人、野球は3000万人、メジャースポーツで日の目を浴びることの多い競技でも、グラブや利用するツール・環境に制限がでると競技人口の減りも大きくなっていきます。

モータースポーツのような機械を使うスポーツはどうでしょう。JAFが公式に出している四輪・カードのライセンス発行者数は合計7万人ほどです。一気に少なくなるのがわかりますがそれでも世界競技人口にしたら数百万人になります。

FPVドローンレースの競技人口はライセンスや競技の統計などが取れていないので正確なところは不確かですが、国内で3000人は超えていると考えています。競技に参加しない遊びでやっている人も含めてです。GDP上位50カ国の国の人たちは世界大会で見たことがあるのでそれなりに競技参加者がいるとして、世界でも10万人〜20万人くらいなのかなと見積もっています。

中長期的なビジネスをする上でこの競技人口の少なさはいろいろなところでネックになってきます。今のFPVドローンレースは自動車レースのように単価も高くないため1人あたりの消費額もさほど大きくありません。つまりこれはメーカー自体も大きな経済にならないということを指します。競技人口が少ないので関係人口も少ないです。ファンはもちろん周辺のサポートするビジネスも生まれないです。

では、この競技人口をどうすれば押し上げることができるのか?マイナースポーツの宿命です。ドローンレースの各国の団体は、この数年悩みに悩んでいました。

〜オンラインレース化〜

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コロナにより世界的に移動が制限され国際レースなどのイベントは開催できない状態が続いています。そうした中で当然おきる流れがオンライン化です。インターネットさえつながればリアルタイムに大会を開催してスキルを競うことができます。テクノロジーを利用することで観客への見せ方も工夫できる幅も増えます。今後この流れはより加速するし、面白いゲームが増えていくはずです。

しかし、現時点においては既存のドローンレーサーがレース参加できる環境が代替されているのみという状況だと考えていて、新しい層が参入しているわけではないためドラスティックな変化は起きづらいと考えています。これまでドローンもラジコンもやらない層が入ってくる仕組みが出来ることが重要です。

LiftoffやVelocidroneなどのシミュレータを本メルマガでもおすすめしていますが、あれは「既存のドローンレースの練習用にゲーム化」されたものです。そもそものターゲットが違うので新規層に刺さるには厳しいです。

https://amzn.to/3hc8MXs

ゲーム会社大手のSEGAから出た「ジャッジアイズー龍が如く」にもショートゲームとしてドローンレースがあるのですが、これはめちゃめちゃゲーム性があって夢中になれてステップアップができて面白いです。ドローンを操作したことがなくてもまずはチャレンジしてレベルアップできるので挫折せずに楽しむことができます。何より子供でも女性でも面白いので誰でもできます。


〜エンタメ性の向上〜

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ドローンレースはやってる人には楽しい競技ですが、事前情報なく観ている人にはあくびが出るくらいつまらない競技です。そもそもドローンがどこを飛んでいるのか、どういうルールなのか、誰がすごいのか、がよくわからない、シンプル性の低さに起因しています。

参加しているパイロット同士は、個々人のスキルや努力、練習方法、ドローンのセットアップなどの文脈を理解しているので応援したり闘志を燃やすことができますが、ドローンレースを見たこと無いひとがドローンレースを見ても「あれ?もう終わったの?誰がかったの?」で終わることがほとんどです。

では、演出を加えたらどうか。
過去に吉本興業さんやアナウンサーさんを交えてレース・イベントを行ったり、ドローンの軌道を音楽や証明と連動したシステムを活用して観客の体験を創りました。満足度も比較的高かったと思います。ライブ配信も10万人を超えるなどアイドルライブ配信と同じ規模でできました。

単発の興行としては良かったかもしれませんが、継続していません。何より、それで競技人口が増えたかというと全く増えません。もう一度ドローンレースを見に行きたいくらいファンが増えたかというと増えていません。その一瞬は楽しい感想が残ってもその人の生活に何も影響を与えられなかったんです。


〜教育教材としてのドローン〜

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世界の多くの団体は悩みました。どうやったら競技人口が増えるのか。どうやったらドローンで遊ぶ人が増えるのか。そこで出てきたのが教育というソリューションです。子供向けのコンテンツとしてドローンを教材として学習機会を提供したりプログラミングと組合せた講座を展開しました。

利用するドローンはFPVドローンではなく、おもちゃのトイドローンやプログラミングができるTelloやMamboなどのおもちゃドローン。僕もドローンの講座は何度も行っていますが、本当に子供にも大人にも人気でこれは海外でも一緒だといいます。この領域は提供できる対象が多いためビジネスにもしやすく、継続的に展開する事業者もでてきています。

でも、ドローンレースをやるひとは増えません。
なぜならば、おもちゃのドローンとドローンレースで使うドローンは別物すぎるためです。

〜シンプルさの追求〜

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FPVドローンレースで使うドローンはカスタマイズ性が高すぎ、仕組みが複雑すぎ、法律含めて参入障壁が高すぎるのです。

自分でパーツを海外から取り揃えてハンダゴテやドライバーを使って組み立てたら、ソフトウェアでチューニングを行い飛行テスト、利用する電波について学び、資格を取得し、複雑な手続きをへてようやく飛行することができるのが現在のドローンレースです。小学生がやりたいといっても無理ゲーです。

飛行することが出来るからと言っても、十分に飛ばすスキルがないため必死に練習して技術をつける必要があります。その過程で大量にドローンを消費しお金を使うことになります。これをそこらへんの小学生や中学生が出来るかといえばよっぽど変わった親で無い限りできません。TVで見たから始めようと思い立ってもすぐに始めることができない現状があるのです。

バレーボールのように「ボールひとつあれば皆でパス回しができる」ように遊び方を究極までシンプルにすることで「始めたいきっかけ」ができた時にすぐに動くことができます。つまらなかったら止めればいいだけです。ドローンレースはやめることを想像させるのも難しい競技になってしまっています。


〜歴史の短さとストーリー〜

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ドローンレースは始まってわずか5年。2年目で賞金総額1億円の国際大会が開催されメディアにも取り上げられる機会が増えたのは以前のメルマガでも話しました。FPVドローンレースはスピードレースで早ければ勝ちです。中でも10代前半の勢いは凄まじく、韓国や日本だけでなく世界各国で早いのは皆子供です。2017年までは大人が勝つことが多かったですが年齢とスキルの反比例現象が起きています。

これは肉体スポーツには起こり得ない現象で、バスケでも野球でもBMXでも10歳より20歳の選手のほうが肉体的にも精神的にも頭脳においても勝っています。ドローンレースの場合は反射神経がよいことが勝因になりすぎてしまっていて、段階を追って得られるフィジカル性能や戦略・戦術の必要性が相対的に下がっている稀有なスポーツです。e-Sportも似たような傾向はあると思います。これが吉と出るのかは現時点ではわからないですが、このまま子供中心の競技になってしまうとお金を出す大人が少なくなり経済として膨らまないリスクが出てきてしまいます。

向こう5年で新しいヒーローが誕生するはずです。その時にどういうフォーカスが当てられるか、どういう演出がされるか、そこにストーリーがあるかが今後大きく影響してくるはずです。

〜新しい競技を生む必然性〜

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僕は2016年に日本ドローンレース協会に入ったころより言っていることは「ドローンレースを再創造する」です。

これまでネガティブ要素もいくつか上げてきましたが、社会インフラとして今後必須である「ドローン」は増えていくことは間違いないです。ここに異論がある人は少ないと思います。ドローンレースのハードルは高くとも楽しんでやる人は確実に増えており、コンテンツとしての面白さは確かに存在します。

人間がこれまで見たことなかった空中の視点、スピード感、移動拡張性はFPVドローンならではの最大のポイントです。ドローンの技術革新ははんぱではなくどんどん小型軽量化し安価になっています。これだけ社会の後押しがしやすいスポーツはないと思います。僕は他のマイナースポーツよりも大きくアドバンテージがある部分がここだと思っています。

改めて僕が最大の課題だと思っているのは、今のドローンレースがピラミッドの頂点にしかないということです。自動車レースに置き換えるならF1カテゴリーしかない状態だと思っています。F1部分を振興してエンタメ化する団体がいて業界を牽引しヒーローを作るのはとても重要ですが、今後ドローンレース業界が面白くなるためには、ピラミッドの2段目・3段目がなくてはならないです。

FPVドローンレース(F1にちなんでD1カテゴリー)人口は微増で良いと思っています。それだけではなく、D2、D3カテゴリーを創出し、ベイブレードのように、けん玉(日本競技人口はまさかの300万人!)のように子供でも大人でもシンプルに楽しみ夢中になり、ステップアップとしてのD1ドローンレースにチャレンジする選手が出てくる未来を想像しています。

ピラミッドの構築は数年でできるとは思っていません。だいぶ先の長い話しだと思っていますが、野球を超えるような競技人口となったときワクワクする未来がまっていると思いませんか?


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2.横田のドローンガジェットレビュー

毎月のように新しいドローンが中国を中心に世界で開発販売されています。
横田が実際に使っているものを中心にレビュー・解説していきます。

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『スマホジンバル DJI OM4』
https://click.dji.com/AClVG_5m1FV5OYsuUvOv0Q

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