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【徹底比較】現役社労士に聞いた社労士用業務ソフト 使える給与計算・労務管理ソフトはどれだ?

開業したときに必要な設備にはいろいろありますが、その中でも比較的早めに揃えておきたいのが業務に必要なソフトです。社労士事務所で業務に必要なソフトは大きく2種類。給与計算ソフトと労務管理のソフトですが、種類が多すぎて、どれを選べばいいか悩む方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、少人数規模から数千人規模までの会社をクライアントに持つ複数の社労士に取材を敢行し、業務ソフトを選ぶときのポイントやそれぞれのソフトの特徴について取材しました。
取材・執筆協力 ステラワークス 金子千鶴代

何を基準にソフトを選べばいいの?

開業して間もない時期は、やはり価格重視

開業して間もない時期は、できるだけ固定費を抑えたいものです。軌道に乗るまでは、できるだけ安く利用できるソフトを選びましょう。業務ソフトにはクラウド型とオンプレミス型の二つの種類がありますが、一般的にクラウド型の方がコストが低く抑えられるソフトが多く揃っています。

例えば、社労士の多くが利用しているMFクラウド給与は月額2,980円から利用できますし、freee人事労務は月額1,980円から利用することができます。開業してしばらくは、顧客規模もそこまで大きくはないことが多いため、まずはミニマムプランなどの小さなプランから初めるとよいでしょう。

直感的に使いやすいかどうかは重視したいところ

社労士の多くが利用している業務ソフトなら、一通り実務に必要な機能は備わっていますから、機能面で選べないときには、「直感的に使いやすいかどうか」を重視すると良いでしょう。例えば、弥生給与は給与明細を入力するときに、一覧表形式で一括入力することもできますし、社員一人ひとりの画面を開いて個別に入力することもできます。

ソフトの中には、数字が自動計算で算出されるため自動計算できないソフトもあります。間違いが起こりにくいという利点はありますが、細やかな修正がききにくいというデメリットも。できれば一定期間いろいろなソフトを試してみて、直感的に使いやすいソフトを選ぶと良いでしょう。

開業して数年は、オプションのサポートを活用する機会も多い

社労士の多くが、開業前に他の社労士事務所で勤務経験があったり、一般企業の人事や経理などに所属して実務経験を積んでいたりします。給与計算業務や社会保険の申請業務などの実務経験が長い場合には、開業後もスムーズにソフトを使えるかもしれません。

しかし、勤務時代に使っていたソフトとはまったく操作感が違うソフトを開業後に使うことにした場合や、そもそもあまり実務経験がないまま開業するような場合には、業務ソフトを使う上で分からないことが出てくる頻度が高いものです。

慣れれば基本的にルーティンなので問題なくなっていきますが、開業して数年は、サポートがある程度充実している業務ソフトを選ぶのもいい視点です。例えば弥生給与では、電話やメールでのサポートが付帯する「あんしん保守サポート」というサービスが提供されていますし、給与奉行もOMSSに加入することでオンラインサポートを受けることができます。これらのサポートは、クラウド型・オンプレミス型に限らずほとんどの業務ソフトで提供されています。サポートはオプションでつけることができたり、上位プランに付いていたりします。ややコストはかかってしまいますが、最初のうちはつけておくと安心です。

クラウド型とオンプレミス型、どちらの方が便利?

最初に悩むのが、クラウド型とオンプレミス型ではどちらを選んだ方がいいか、という問題かもしれません。以前に比べると両者の違いは減ってきており、弥生シリーズや奉行シリーズなど、オンプレミス型だったソフトもクラウド化が進んでいるため、選択肢の幅は広がっています。

ただ、やはりクラウド型とオンプレミス型とでは、若干使い勝手に違いがあるのも事実です。

データの連携が楽なのはクラウド型

依頼内容によっては、クライアントの従業員に給与を振込処理する業務を社労士が行うこともあります。その際、従来の給与計算ソフトでは、給与計算データを基にネットバンキングにアクセスし、CSVファイルを読み込ませてデータを連係させる必要がありました。しかしCSVファイルは行がずれてしまうとうまく連携できないため、実は連携には手間がかかることも。また、手入力で一件ずつ振込処理を行っている会社もあります。

社労士事務所で給与計算の振込処理まで受託することを想定しているのなら、こうしたデータ連携はできるだけスムーズにおこないたいところです。給与の振り込みに限らず、こうしたデータの連係は、業務ソフト全般の課題と言えます。データ連携の手軽さでいうならば、オンプレミス型よりもクラウド型の方に軍配が上がります。API連携に対応しているソフトが多いためです。

例えばMFクラウド給与は、給与データを振込APIでネットバンキングができる(対応している銀行のみ)ため、ワンクリックで振込処理が完了します。

サプライ品が充実しているのはオンプレミス型

クラウド型の場合、給与明細はPDFで読み込み、必要に応じて印刷する形になります。基本的にペーパーレスなので、クラウド型を利用する場合は社労士事務所側にも給与明細を印刷・郵送する手間が省きやすいというメリットがあります。

また、クライアントの従業員が手元のスマホやパソコンなどを使っていつでも給与明細をチェックできるのもクラウドの利点です。ただその反面、給与明細の専用用紙や専用封筒などはなく、各帳票は普通のコピー用紙に印刷して出力する形が一般的です。

一方、オンプレミス型の場合、給与奉行や弥生給与などのように専用の明細用紙や封筒などのサプライ品が充実しているソフトも多いため、「明細は紙で出したい」というクライアントにも対応することができます。

事業所によっては、給与明細に一言メッセージを添えて従業員に渡したいという希望を持つところもあります。クライアントの希望に添えるのはどちらのソフトなのか、基本的なことを事前に知っておくといいでしょう。

給与計算ソフトのおすすめと特徴一覧

弥生給与

価格帯も安く、多くの会社が使用していることから、開業時に導入するソフトとしてもお勧め。

クラウド系の業務ソフトによく見られるが、時給などの情報が全て登録制になっており、自動計算できるものの、後から手入力で修正ができないソフトもある中、弥生給与は各項目を手入力で入れられるため、融通がききやすい点がメリット。

ラインナップとしては、クラウドアプリの「やよいの給与明細オンライン」とデスクトップアプリの「やよいの給与計算」「弥生給与」があり、「やよいの給与計算」よりも「弥生給与」の方が機能やサプライ品が充実している。

また、最大2ヶ月の無料体験プランも用意されている。さらに、次年度の申し込みを前提に初年度は無料で使うことができる。クラウドアプリは従業員30名まで従業員を登録することができる。

「やよいの給与計算」は30名まで、「弥生給与」は無制限で従業員数を登録できるが、実際には、やよいの給与計算は20名までを推奨、弥生給与は100名程度までを推奨となっている。そのため、開業時には使い勝手がよい反面、事務所が軌道に乗って規模の大きなクライアントが増えてきた場合には、ソフトの乗換も検討が必要になる可能性もある。

マネーフォワードクラウド 給与/社会保険

MFクラウド給与やMFクラウド社会保険のほかにも、年末調整や社会保険の手続きや勤怠管理やマイナンバーの収集・管理なども連携できるサービスが充実している。

また、API連携も充実しているため、データ連携に手間がかからないのが特長。これらのサービスを包括して、社員30名以下の場合は月3,980円(年額プランは月2,980円)〜とリーズナブルな点も魅力。

ただ、元々MFクラウドは経理・会計ソフトを主流としてリリースしており、後から給与ソフトを連動させる形で開発・提供していることもあって、手当てを入力するために違う画面に飛ばなければならないなど、社労士的には直観的に使いづらい点がある。とはいえ、クラウド系の業務ソフトとして最もお勧めと言う社労士は多い。

ジョブカン(勤怠管理システム)

e-Gov外部連携API対応。初期費用がかからず、無料プランもあるなど、使用料も全体的に費用が安いのが魅力。また、30日の無料お試し期間があるため、検討しやすい。無料プランは従業員5名まで、有料プランは月額400円/人と安価な点も魅力。メールやチャット、電話でのサポート体制があり、サポート費用もかからない。

従業員の入退社時の社会保険手続き業務などに対応したジョブカン労務HRやジョブカン給与計算などの連携サービスがある。

オービック 給与奉行クラウド/労務管理電子化クラウド

サポート体制が充実しており、会計・経理ソフトのほか、債権管理や仕入れ在庫管理など、多様なシリーズ展開があるのも魅力。また、サプライ品も充実しているので、給与明細を紙で渡したいというクライアントにも対応できる。奉行シリーズは、大企業やその子会社などが導入していることが多い。

昔は導入費用が30万円ほどと高額だったが、今は5万円で導入できるため、社労士事務所でも開業時から導入しているところもあるよう。労務管理電子化クラウドは年間利用料が168,000円、従業員1名あたり月額500円と、他のソフトに比べてやや割高であることは否めない。将来的に事務所が軌道に乗ってからのことまで考えて導入するのなら検討する価値はある。30日間無料お試しができるので、試してみるとよい。

人事労務freee

e-Gov外部連携API対応。MFクラウドと同様に、経理・会計ソフトが主流なので、やや直観的に使いづらい点がある。ただ、経費計算システムとの連携もスムーズにできるほか、出退勤もクラウドで管理できる。料金プランは、月額2,200円(年払いの場合は月1,980円)〜となっている。

フリーウェイ給与計算

従業員5名までなら無料で利用できる。6人以上でも、月額1,980円と安価な点が魅力。有料版は、登録従業員数や登録会社数も無制限で行える。ただ、一括入力ができないため、従業員数が数十名に増えると、手間が煩雑になる可能性がある。

労務管理ソフト

電子申請のための労務管理ソフトは、行政が提供しているe-Govをまず使用し、e-Govで対応していない手続きについては市販のソフトを使うというやり方が一般的です。ただ、電子申請の場合はまだ行政側の体制が整っているとは言いがたいため、電子申請と窓口での申請を使い分けている社労士が多いのが実情です。

例えば、窓口に申請書を持参する場合はその場で修正ができるような軽微な修正であっても、電子申請の場合は全て返戻されてしまうため、すぐに訂正できるようなものであっても再提出を求められるという面倒さが未だにあります。この点も踏まえた上で、労務管理ソフトの導入を検討するとよいかもしれません。

オフィスステーションPro

e-Gov外部連携API対応。社会保険や労働保険、マイナンバーや年末調整関連の帳票など、対応帳票は100種類以上という種類の多さが特長。また、法改正にも自動対応してくれるので安心。 

労働保険の手続きの中には未だに複写の用紙に手書きで申請しなければならないものがあるが、オフィスステーションなら電子申請に対応している。アカウントを発行すれば、クライアントに必要な情報を入力してもらい、そのデータを社労士事務所が連携作業なしで共有できる。社労士法人が開発に関わっていることもあって「使いやすい」という評判も高く、実際に使っている社労士事務所も多い。 

社労士向けの「オフィスステーションPro」は、登録料110,000円、月額11,000円で利用できる。お試し期間は14日とやや短い。難点は、使用頻度が低いような情報まで入力しなければエラーが出てしまうこと。細かい情報まで入力が求められるため、この点に慣れることができればお勧め。 

社労夢

クラウドアプリの「shalom」は社労士事務所用のソフト。一般企業向けに「社労夢 Company Edition」も展開している。 e-Govに対応したAPI外部連携システムを導入。老舗といってよく、2,600軒以上の社労士事務所で使われている。給与ソフトと連動できるため、データのやり取りが楽。無料トライアルが2か月とやや長めなので、検討しやすい。 

導入費用は、初期費用が100,000円、1ライセンス月額20,000円となっていたが、現在は公表されていない。 

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