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6月の遠い思い出

6月になり雨が続く中、裏庭に紫陽花が咲いた。
毎年、6月は来て紫陽花は咲いていたと思うけれど、大切な思い出を忘れていた。

紫陽花・・・・
50年ほど前の遠い情景を思い出した。

あの日、夫が「ちょっと来て」と言うので、後をついて行った。
山に差しかかる木々の中、少し薄暗い草の中で、ひときわ凛として咲いている美しい花があった。
それは、紫の額紫陽花だった。
光っているように見えた額紫陽花。
「ここは、とっておきのいい所!」と夫が笑顔で言った。

その後、余裕のない日々を送っていて、夫が亡くなってから、忘れていたその場所に一度行ってみた。
そこは、もう木が伐採され、かつての額紫陽花はどこにも見当たらなかった。

今年は、その思い出がふとよみがえって来た。
額紫陽花は、梅雨の雨の中にひっそりと咲く姿から、「謙虚」という花言葉らしい。
あの日の額紫陽花は、確かに謙虚にそして凛として咲いていた。
そして、今も部屋にある夫が描いた額紫陽花の絵はその花だった。

私は大切な思い出を忘れていた。
心に残る美しい思い出もいっぱいあったのだ。
昔の遠い日の夢をみたような気がした。
良い思い出をありがとう・・・!


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