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別れの春

3月の終わり、京都駅で東京行きののぞみを待った。
新幹線の自由席ホームで、高校生かな?と思われる
男子4人組の後ろに並んだ。
彼らは結構ハイな様子で仲良く話をしていた。

突然、「写真撮ってもらえますか?」と1人が私に言った。
「はい。ここで良いのですか?」
「はい」と言い、ホーム柵を背に4人が並んで、笑顔でこちらを見た。
緊張して写真を撮った。
「ありがとうございます」と彼らは言った。
私は「のぞみ号が入って来た時が良かったら
又写真とりますよ」と言ってしまった。
1人が「はい」とうなづいた。

その後しばらく、彼らはとっても楽しそうにワイワイしていた。
今頃?初めてのぞみに乗るの?わくわくうれしいの?
でも荷物持っていないし旅行でもなく、遊びに行くの?
4人の様子は不思議だった。

そこに、のぞみ号が入って来て停車した。
ドアが開いて、多くのお客さんが降りてこられた。
急に彼らは、1人対3人の立ち位置に変わった。
そして1人に向かって3人が別れの言葉を言い出した。
のぞみ号を背にした方の彼は、涙目になっていた。
あんなに笑顔だったのに・・・
その傍らで、私は先に乗車した。
遅れて、東京に向かう彼が、涙顔で席を取りに来て
又すぐにドアの方に戻った。
「最高だった」と言う声が聞こえた。
そして、電車が動き出した。
再び彼が戻ってきた。
やはり、涙にぬれた顔であった。

全てが理解できた。
ああ、いい友達だったのだ。
1人が東京に行ってしまうのを見送りに来ていたのだ。
さみしさを紛らわすためのポーズだったのだ。
私が撮らせてもらった写真は
別れ際の4人の写真だったのだ。
こちらも涙が出そうになった。
きっと彼らは、大人になってもいい友達だろう。

SNS等の時代に
若者たちの
心打つこんな別れの姿を間近に見られて
うれしかった
美しいと思った

こんな絆の友達がいたら
離れていても
いろいろなことがあっても
きっと大丈夫だろう

1人で電車に乗った彼に
心の中で応援の拍手をした。

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