見出し画像

羊と緑野と海だけなのに

2009年3月11日~21日 アイルランド紀行24
3月18日 晴天
Killarney - Dingle Peninshura - Dublin③

車に乗り込み、キルマルケダル教会が立つ丘を下っていくと、The Three Sistersが角度を変えて近づいてきた。あの三つ頂きのどれかに上って、春の海を見はるかしたら、どんな気分だろう。
そんな好奇心がむくむくと湧いてくるが、飛行機に間に合わなくなるのでそれはお預け。

やがて車はディングル半島の突端に近い海沿いの道に出て、ここでもまたとない風景を見ることができた。

羊が草を食むなだらかな緑野の丘は、突如クッと直角に海に落ち込んで崖をつくり、その岩場に波があたってはくだけ、くだけた波間に光が輝いている。遠くにはブラスケット島がみえる。
羊と緑野と海だけなのに、ただただ溜息がでるばかりの美しさ。ここにも神様の魔法がきっとかかっているのだ。

通り沿いに映画「ライアンの娘」の撮影地だと表した看板があった。
さっきのインチ海岸といい、素晴らしいロケーションチョイス。
帰国して調べたら、「ライアンの娘」は「アラビアのロレンス」を撮ったデヴィッド・リーン監督の作品だった。モハーの断崖も舞台になったらしい。

ブラスケット島

やがて一方通行になるわけでもないのに道が極端に細くなった。対向車をよけるのにわずかの窪みしかない。右手は海、左手は崖、しかも崖崩れ危険の標識まで立っていた。

とあるガイドに「…細い道を何台もの大きな観光バスとすれ違わなければならず、とても怖いです。」という記述があったが、絶対にスリア岬に向かうこの道のことだと確信した。

そのスリア岬の突端に、海を臨んだキリストの磔刑像と足元にひざまずく聖母マリアとマグダラのマリアらの像がある。きらめく陽光を受けて、まぶしい。

しかし、狭いながらも突端に設けられたわずかな駐車スペースに車を止める人の注目は、この白亜の像ではなく石塀の上を歩くカモメであった。

カモメは、近づいても決して飛び立つことをせず、よちよちと逃げるだけ。
あまりの愛くるしさに、次々に車が止まって撮影をするので、狭い道はますます混み合った。我々もご多分にもれず、駐車してこのカモメを連写したのであった。

※この旅行記は以前に閉じたブログの記事に加筆して、2023年春にnoteに書き写してます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?