見出し画像

ストリート・グルメを求めて

Netfixの大好きなドキュメンタリーシリーズに『ストリート・グルメを求めて』がある。「街角や露天の市場などの屋台を中心としたストリート・フードを紹介するシリーズなのかな?」という軽い気持ちで観始めた。「あー、旅に行きたい」と誰もが思う匂い立ってくる画面。異国の喧騒。旅をしているような感覚になりながらも、そこから見えてくるのは、その国の歴史や社会問題だ。そして、その視点があくまでも、誇りをもってストリートに立ち続ける一人一人のシェフの背中を通して見えてくる。

ストリート・フードを作り始めたキッカケは、ほぼ「家族を養うため」「自身が生き延びるため」なのであるが、シェフたちはそれぞれにプライドを持って職業を通して覚醒していく過程を見ることができる。「最近、仕事がつまらないな〜」なんて、ぼんやり考えているとしたなら、思わず背筋を正してしまうことになる。

タイ、インド、台湾、日本、韓国、シンガポール、インドネシア、フィリピン、ベトナムが取り上げられたアジア編に続いてラテンアメリカ編が先頃配信された。

アルゼンチン、ブラジル、メキシコ、ペルー、コロンビア、ボリビア。

これが、アジア編をさらにパワーアップさせたかのような迫力で一気見してしまった(一本が30分程度という尺なのもいい)。

第一回はアルゼンチンが舞台。ブエノスアイレスの市場で父親が始めたけれど潰れそうだった食堂を立て直そうとする一人の女性が登場。アルゼンチンではそれまで「肉は男性が焼くのが当たり前で、女性が肉を焼くことはあり得なかった(!!)」のだと言う。その苦難を同性パートナーと乗り越え(その紆余曲折も泣ける)、2人は決して広いとは言えない厨房の中を「ダンスを踊るように料理する」と言い合う。

男性のシェフも登場するが、全編を通しメインで取り上げられるシェフは、ほぼ女性である。その背後には貧困、暴力という課題が横たわる。たまに登場するミシュラン店のシェフたちは全て男性だったりするので、料理界の明らかなジェンダー構造もビビッドに描かれる。

初めから制作側が意図していたのかどうかは分からないが、このシリーズは間違いなく、各国の女性の現状を詳かにしつつ、女性がこの社会で生き抜くための考え方やロールモデルをさししめしているようにも思う。

地元の歴史を脈々と受け継ぎながらもアップデートを繰り返す、アーティストさながらのシェフたち。街が整備されていく過程で、その文化はどんどん失われているという。

はたして、それは誰のため? 

オリンピックのためのお色直しがほぼ完了した東京の街を歩きながら、そんなことにも思いを馳せてしまうドキュメントシリーズ。オススメ!

=======




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?