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若者が業界に物申しやすい環境づくりを考える

大学生の時、入社面接を受ける前のレクチャーを受けた際に、ビックリしたことがある。「短所を聞かれたら、長所を答えろ」と言われたことだ。もちろん、それは少し乱暴な説明で、厳密には、「短所も転じれば、自分の長所であることをアピールしろ」ということになる。

諦めが悪い→物事に真剣に取り組める。
八方美人→コミュニケーション能力
器用貧乏→機転が効く   ……etc.

と言ったように。

よくよく考えれば、入社を決めてもらう面接官を前に、自分が不利になるような真のネガティブな情報を与える必要はない、ということなのだから、至極ごもっとも。

「君たちの意見が聞きたい」と腹の内が見えない直属の上司に言われて、「あなたの差配はどうかと思う。なぜならば」と真実を告げるという選択もほぼない。理由は、自分が不利になるだけ、面倒が増えるだけ、だから。

昨晩の『アメトーーク!』。テーマ「業界 未来への提案」が告知されていた時から楽しみにしていた。

テレビ朝日が現在「未来をここからプロジェクトWEEK」と題した企画を展開しており、『アメトーーク!』もその一環で組まれたテーマとのこと。

が、正直、肩透かしだった。番組を観た上で、思い出したのは、前出の入社面接対策のエピソードや上司とのやりとりだった。

そりゃ、そうだ。キャスティング権をもっている人たちの前で、そこで働こうとしている若者が本当に腹に抱えることなど言えるはずがない。

その中で、最も気を吐いていのは、ダントツで宮下草薙の草薙さんだったと思う。「芸歴を重視する縦社会はダサい。芸歴を聞く文化をなくす」という彼の提言。それは、横わたる業界の構造の問題をズバリ指摘していたな、と。そして、覚悟を持って、彼は「この責任をもつ」とハッキリと大声で主張した。もちろん、草薙さんという一見ゆるキャラがそう振舞うことで、それが笑いに昇華されたわけだが、彼の中にある”漢”を見た。彼がテレビに出始めの頃、こんな風に覚醒するとは予想できなかった。皆が怖くて言えない忖度のない言葉を口にする強さに、人はヒーローを見る。彼は常々、(嘘か誠か)「芸能界に一生いたくない」を公言している。それが強さの源だとも思うし、真実をシャウトしても愛されるという天賦の才能があってこそ、なのだが。彼が現状、たくさんの番組に乞われる理由が、とてもよく分かる回であった。

ちなみに、『アメトーーク!』の来週のテーマは、『40歳過ぎてバイトやめられない芸人』。今週のテーマは、「会社からの令でやったまでで、僕たちが本来やるべきテーマはこっちなんで」という企画会議が見えてくる。単なる私の邪推だけれど!?

熱くディベートさせやすいテーマだったと思うゆえに、見ているコチラは消化不良。それに対し、制作サイドはどう考えていくのかという議論こそが本来すべき「未来を考える」ということなのではないか。

言うは易し。私も若者の自分への苦言や提言に、意識的に耳を傾けているわけでも、言いやすい環境をつくれているわけでもない。自戒を込めて。

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