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痛み、記憶、そして、愛。映画『ペイン・アンド・グローリー』

公開を待ちわびていた『ペイン・アンド・グローリー』をやっと観賞。

スペインの巨匠ペドロ・アルモドバル監督が長年にわたりタッグを組んできたアントニオ・バンデラスを主演に迎えた今作。バンデラスは、アルモドバル監督の「セクシリア」(1982)で映画デビュー、「マタドール」や「神経衰弱ぎりぎりの女たち」など、アルモドバル作品で高い評価を得て、ハリウッド進出。その後の快進撃は周知の通り。

そして、59歳となったバンデラスが70歳のアルモドバル監督と再びタッグ。キャリアの表現として「脂がのった」「脂がのりきった」とはよく使われるが、もう、間違いなくそれ以上の円熟味がスクリーンから豊潤に香りまくってくる。熟成肉の旨みとでも言ったら良いのだろうか。うーむ。監督の自伝的要素を多分に織り込んだ作品のために、作品には「時間のもつ意味」というようなことが通底しているのだが、それは、この2人のプライベートにおける「時間を共にし、切磋琢磨してきたであろう意味」までをも内包しているかのような作品であった。

とにもかくにもアントニオ・バンデラスが素晴らしい(監督のミューズ、ペネロペ・クルスももちろん良いのだけれど。注:2人が恋愛するラブストーリーではありません)!!! 今年のオスカーは、『ジョーカー』のホアキン・フェニックスで間違いなしと言われてきたし、私もそう思っていたわけだが、この作品の観賞後は、「バンデラスにあげたって!」という気持ちになってしまった(ホアキンには、この先もまだチャンスがある!)。

映画愛が詰まっているし、幼少期の描き方に、アルモドバル版の『ニューシネマパラダイス』とキャッチフレーズがつくのはよく分かる。でも、私が観賞後に思い出した映画は『バグダット・カフェ』だ。

ストーリーが似ているわけでも何でもない。ラスヴェガス郊外の砂漠の日差しと今作のスペインの田舎の日差しも違う。だけれど、真夏の太陽により引き起こされる気怠さや郷愁がとても似ている。

痛み。記憶。多様性。再生……そして、愛。

観賞後の残り香が私にとってはとても似ているのだ。

心身共に疲れ果てた時、私たちは人から距離を置きたくなるものだが、それでも、そこから自分を浮上させてくれるのも、やっぱり人であり、人との甘美な記憶なんだよな、ということも思ったり。その人と人との距離感の絶妙さも、この2つの映画の共通点のような気もする。

うだるような真夏の一日にキンキンに冷房で冷やされた部屋で観る『バグダッドカフェ』は私にとってかなり多幸感に満たされる時間だったりする。(2014年の8月のinstgramに、「毎夏、これで涼みます」「キンキンと冷えた部屋で観るのが好き」と投稿↓)。

『ペイン・アンド・グローリー』も、私にとって真夏に必ず見返したくなるエバーグリーンな作品の一つにエントリーされた。

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以前、noteに書いたペドロ・アルモドバル監督が製作で参加した映画のレビューです↓↓↓





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