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Clubhouseと「耳の可処分時間」と

耳の可処分時間をどう取り合うか。メディアの次を考えるとき、その議題がとり上げられるようになって久しい。

とはいえ、オーディオブックやPodcastがアメリカほどに日本で普及しない理由を知人は、「長距離運転する人が少ない」「英語力の欠如による」と言った。「日本語で発信しても、ほぼ日本人にしか聞いてもらえないので、日本国内では発展しづらい」と。供給量が少ないので、需要も伸びず…というわけだ。

「声のソーシャル」の台頭が長らくヴェンチャーキャピタリストたちに期待されていたことだ。実際に2019年のシリコンヴァレーでは、多くのインキュベーターやアクセラレーターが音声系のスタートアップに非常に積極的に投資していた。これに対して昨年までは、ポッドキャストのような双方向性とソーシャル性の低いサーヴィスしかなかった。

そして、急に話題になっている音声SNS「Clubhouse」。

音声版のTwitterとも言われ、招待制なところはmixi的!?  現状は、起業家の方々を中心に、Twitter上のインフルエンサーの方の「はじめました!」投稿で、それらの人々の特権意識は刺激され、それ以外の人々が渇望感を煽られている、といった状態か。メルカリでは本来無料であるはずの招待枠が高値で売買されている。

機能を把握したとき、英語力があったら、これは世界がグンと広がるな、と。翻って、音声翻訳の精度が急激に上がるのではないか(つまりは、音声のビッグデータをめっちゃ吸い上げられる、の意)。

個人的には、好きなバンドの制作過程の音や会話のやりとりを聞けるなら聞いてみたいな、と。あわよくば、その音作りに参加できる可能性さえも秘めている。たくさんのクリエイターが集い、一つの音楽に向き合う、それを生で当事者たちと共有できると考えることは想像しただけで楽しい(もちろん、アーティスト側はこれを逆手にとって宣伝として上手に使う人がたくさん現れるはず)。

たくさんの起業家が偶然につながる頻度が爆増し、社会が良きように流れていく可能性もあるかもしれない。

mixiのような炎上のない平和なサードプレイス的コミュニティとして、人々の中で機能するのかもしれない(ちなみに、本国アメリカでは、トランスフォビアやレイシズムと結びついて物議を醸したらしい)。

リモートワーク に切り替わり、「雑談」に飢えている人は、ラジオのように部屋で誰かの雑談を聞いていたいという人の需要もありそうだ。

山口周さんのつぶやき。

移動が制限されている今、セレンディピティ(思いがけない偶然)の感動や出会いを得ることが難しくなっている。それにより、「自分のいるべき場所」へ向かう機会は奪われ、「いざるをえない場所(あるいは、いざるをえない場所だと思い込んでいる場所)」へ、心身共に拘束されている人は多い。もちろん、私もその一人だという自覚がある。

「セレンディピティを求め、人々は新たなるSNSに夢中になる」のである。

一方、以下の記事の指摘も私には気がかりだ。なぜ、このサービスが熱量を持ってユーザーに迎えられているのか、その理由が挙げられている。

FOMOとは、「Fear of missing out」の略称で、直訳すると「取り残されることへの恐れ」という意味だ。これはベンチャーキャピタリストで自著も持つパトリック・J・マクギニス氏が提唱した言葉で、SNSなどで「大事な投稿を見逃してしまうのではないか、自分だけが取り残されるのではないか」と不安になり、恐れることを指す。

先週末に、『スマホ脳』を読んだ。

人間の脳は(現在の)デジタル社会に適応していない。

ということが、綴られている。

SNSに費やす時間が、企業にとっては黄金の価値を持つ。広告が売れるからだ。彼らの目的は、私たちからできるだけの時間を奪うこと。

上記の記事にもあるように、インフルエンサーにいきわたり、「私もそちら側に行きたい!」という渇望感が頂点に達する時、Clubhouseは必ず一般開放される(あるいは、招待枠を増やし、ユーザーを増やす)時が来るはずだ。

その時、「広告」のあり方はどうなっているのか? どんなデータが吸い上げられている可能性があるのか(声紋?)? どう課金してくるのか? には注目したい、と思う。

最後に改めて。

SNSの世界は、私たちの「耳の可処分時間」をとりにきている。

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【今日の一本】ヘッドスペースの瞑想ガイド

瞑想が人生のもたらす効果について。さらに、その方法も解説されています。

追記 2021.01.31】

Clubhouseという名前は、人々が集団の一員になりたいと切望していることを見事に言い表している。
Clubhouseでの、黒人女性に対する攻撃や反ユダヤ主義などの人種差別、虚偽または誤解を招く情報の流布、そしてセクシズムやエリート主義の蔓延が問題視され、アプリは「エリートの遊び場」と呼ばれることが出てきた。2020年の後半にかけて、Clubhouseにおけるコンテンツ・モデレーション(有害・不適切なコンテンツへの監視・対処)の議論が拡大していく。
Clubhouseに対抗する動きも出始めた。Twitterが、「Spaces」と呼ばれる音声ベースのコミュニティ機能をテストしはじめたのだ



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