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読書日記

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2019年9月の記事一覧

国連でスピーチをしたグレタさんの怒りを他人事にしないために

ここ数日、かなり話題になっているスウェーデンの活動家グレタ・トゥーンベリさんのことは、昨年、国連広報センターのFacebook投稿で知った。たくさんシェアされたCOP24(気候変動枠組条約第24回締約国会議)スピーチだ。 先日の国連の温暖化対策サミット。日本では当初、小泉進次郎議員出席の話題が先行していた(ような気がする)。 グレタさんは、各国の代表の前で、よりエモーショナルな演説をした。そのサミット前には、日本をはじめ、アメリカやドイツ、オーストラリアなど各国で高校生な

ヒトの脳にはワニとウマが住んでいる?  人がツンデレする理由『ジュラシック・コード』

修士論文執筆にあたり、脳に関する本を数冊読んでいたら、教授が「三位一体脳モデル」の存在を教えてくれた。聞いた瞬間、私の文系脳は「そこまでは無理」とシグナルを発したけれど、中でもいちばん理解しやすい本をさらに教えていただく。 ①脳幹(その中の視床下部)……パワフルな暴れん坊『爬虫類脳=反射脳』/得意技は本能。 ②大脳辺縁系(その中の扁桃体)……おしゃべりでにぎやかな人気者『動物脳=情動脳』/得意技は感情。 ③大脳新皮質(その中の前頭連合野)……優等生のエンジニアタイプ『人

天才とSNSとナルシシズムと。『カニエ・ウェスト論』

修士論文と向き合うはずが集中力を欠いた三連休。息抜きに、と家にあった夫の本を小脇に抱え、近所の喫茶店へ。 お騒がせセレブのカニエその本の名は『カニエ・ウエスト論』。カニエのアルバムはすべて聴いてきているけれどファンと言うにはおこがましいレベル。どちらかと言えば、ブッシュ元大統領やテイラー・スウィフトに対してとった行動に顰蹙を買うようなお騒がせセレブとしての、またはデザイナーとしての、または、(こちらもお騒がせセレブ)キム・ダーカシアンの夫としてのカニエの方が親近感が湧くレベ

「自分の強みを知るとラクになる」は本当か?

「あなたってこういう人だよね」的なことを言われても、「へ〜」とは思うけれど、そこまではあまり真に受けることはない。というのも、自分は場面場面で発露しているキャラクターがかなり違うという自覚があるから。もちろん長い付き合いの友達や夫の意見には「ですよね」と思うこともあるけれど。 177問のチェックテストで資質が分かるそんな私が大学院の教授に薦められたのがストレングスファインダー。177問の設問に答えると自分の強みが分かるというチェックテストだ。所要時間はおよそ20分くらい。同

働きながら「40代半ばで大学院に通う理由」のようなこと。

大学院に通って2年目の夏を終えようとしている。かなり衝動的な勢いで入学し、これまでに正直ダレてしまったこともあったが、きちんと通い続けている。 入学時の理由はいろいろあったが、実際に通ってみてから「通う理由」を考えてみると、「私は学ぶことを趣味にできる人間だった」という事実に行き着いた。今も昔もテストのための勉強は大嫌いだけれど、そういえば自分の興味があることは時が過ぎるのも忘れるくらいのめりこめる体質だった(でも、冷めやすいので要注意)。 まず、気分転換になる 「仕事帰

これは、“あなた”の物語! ミシェル・オバマ回想録『マイ・ストーリー』

ファーストレディ。 (なりたくてもなれるものではないけれど)なりたくてなったわけでもないひとりの女性が、たくさんの立場や経験を通し、“自分になっていく=becoming(原題)”プロセスを丁寧に描いた物語。それが世界中で の大ベストセラーとなり、遂に先頃、日本でも発売された『マイ・ストーリー』だ。 「BECOMING」は日本語になりうるか? この一冊を通し、ミシェルは「自分は特別な存在じゃなく、私たちとなんらかわらない普通のひとりの人間であること」を幾度となく強調する

「アマゾン森林火災」で分かった思い込みの怖さ。もう一度『ファクトフルネス』を読もう。

先日、アマゾン森林火災について「大変!」とばかりにコラムを書いてしまったけれど、反省。 現在は、先頃のメディアやSNSの大騒ぎをカームダウンさせるべく、専門家による以下のような事実が散見される(ただし、このような報道は、火災を伝える報道に較べたら圧倒的に少なかったりもするのだけれど)。 今回の火災を森林伐採と結び付ける著名人やジャーナリストは、極左の陰謀論者だと批判されがちだ。昨年の大統領選にも出馬したマリーナ・シルバ元環境相は8月、自身のブログで「アマゾンのホロコースト

ぼくたちは何だかすべて忘れてしまうね。塩田千春『魂がふるえる』展。

山あいの盆地で育った。山と川と田んぼと……結構な田舎町だったと思う。小学生の初夏から秋にかけては毎日のように校庭の草むしりをさせられた。特に夏休み明けは、かなりワイルドな状態になっていて、自分の腰ほどに伸びてしまった雑草を絵本の『大きなかぶ』よろしく、全身の力を使って抜いていたと思う。 小さい頃の夏の記憶 大きい雑草だけでなく小さな雑草も、引き抜く時には程度の差こそあれど、プツプツという感触があった。根が土の中で細かく切れていく、大地と根をひきはがす際におきる決別の音。「雑