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客がいないなら、座って休めばいいのにな

平日のお昼間、私はベトナム企業のデスクをお借りして仕事をしている。直接的にベトナム人と働いているわけではないので(私は日本からの仕事をフリーランスとしてこなしているから)、言い切ることはできない。けれど彼らの働き方を見て、とてもおもしろいと日々思う。


日本なら就業時間中、みんなは一生懸命集中して仕事をするものとされている。働いている人もそう思っているし、お客さんもみなそう考えている。

でもベトナムでは、就業時間全てを全力で働こうと思っている人は…、ほぼいないような気がする。コンビニやレストランの店員も、役所の公務員も、街角にたつ警官さえも。みんなお客さんがいなかったり、やることがなかったりする時は、座っている。それからスマホでゲームやチャットを楽しんでいる。さらには口をあけて寝ていることもある(あまりにも気持ちよさそうだから、起こすとき申し訳なくなっちゃう)。


この光景に一旦なれてしまうと、日本に帰ったとき、日本人の意識の高さはすごいな〜と驚いてしまう。コンビニで会計が終わり、私はイートインコーナーで買った雑誌を座って読んでいるだけなのに、店員たちはレジでビシッと立っている。私以外誰も客はいない。それに入ってくる気配さえない。私はその光景が面白く感じてしまい、雑誌を読むのを止め、店員たちの様子を見ることにした。

レジにビシッと2人の店員は立っていた。そして手持ち無沙汰になったのか、1人の店員が掃除用具を持って商品棚に向かった。そしてホコリのない棚に何度も、ほこりを取るふわふわがついたハンディモップを滑らせているのだ。

心のなかで思ったのである。座って休憩すればいいのになぁと。他の客は分からないけれど、私は絶対に怒らないし、それぐらいのほうが心地よく過ごせるのに。


接客業だけでない。私が間借りしているオフィスでも、ベトナム人たちは適度に休みながら働いている。与えられた自分の仕事が終わってから、彼らはYoutubeを立ち上げて、おもしろ動画を見ている。たまに我慢できずクククと笑いがこぼれてくる。みんなそれを咎める様子もないし、社長が様子を見にきた時だけ、素早く画面を切り替えている。

そして新しい仕事が割り振られた時、また働くモードに切り替えて仕事を始めるのだ。

日本にいるときの私なら、手持ち無沙汰な時は仕事をしているふりをよくしていた。無意味にオフィスソフトを立ち上げて、マウスを動かし、過去に入力済のデートをぼんやり眺めていた。


だからこそ、このベトナム人たちの働き方は新鮮に感じたし、なによりも羨ましく感じた。そして更には、こっちのほうが案外うまくいくんじゃないかなと思うようにもなってきた。何事も緩急が必要だと思うから。やる時はやって、それ以外は緩めて。緊張状態を無理やり続けるよりも、ずっとヘルシーだと思う。

そしてこの休みつつ働くが社会に浸透しているから、体調不良でも遊びにくのでも、彼らは遠慮なく仕事を休む。そして自分以外の誰かが休んでいても、自分に影響がかからないのであれば、全く気にしないのだ。


今日も近所の商店で、おばさんが小さないびきをかいて寝ていた。暑いお昼下がり、まぁお昼寝もしたくなるだろう。涼しくなったら、また来よう。私もすっかりベトナム式の考え方をするようになって。ただ、このまま日本には帰れないな〜と一人で考え、肩を小さくすくめた。


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