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空が広い街

京都の大学に進学することがきまったとき、京都のマンションの家賃って結構高いんだなぁと思った。仲が良かった友だちは、大阪で一人暮らしをする。京都よりも街中で暮らす彼女のほうが家賃が安くて、うらめしく思った。

彼女いわく、大阪は高層階まで建築可能であるから、同じ土地に沢山の人を住まわすことができる。だから家賃が安くなるそうだ。それに比べて、私が住んでいたエリアのマンションはどんぐりの背くらべ。だいたい5階くらいの高さで、見上げるようなものではなかった。同じ土地面積でも住める人が少なく、必然的に家賃を上げざるを得ないのでは? ということだった。


背が低い建築物が立ち並ぶ京都の街を見て、まだ10代だった私はため息をついた。山に囲まれたのどかな生活から抜け出したいと、受験勉強を頑張ってきたのに。見上げれば、遮るものがない空が広がる私のふるさと。京都の空も、同じように広かった。



そこから大学を卒業して、東京や台北で働いた。この2つの都市には、地上からにょきにょきと高層がビルが連なるように生えていた。住み着いた当時はえらく興奮した。空が見えないのだ。人工のキラキラと光る窓が着いた、銀色の長方形で、空が覆い尽くされている。これが、都市の生活...! と思った。


そこから何年も、大きな都市で忙しそうに生活をした。すると、やっぱりか。空が恋しいのだ。青くて抜ける空が。

今、あぁ帰りたいな〜と思う。18歳の頃の私がつまらないと嘆いていた、あの空を見たい。台風の影響で、悪天候が続くハノイからもんもんと空を恋しく思う、雨降りの朝。



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