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サラダバス(毎週ショートショートnote)

バスケットに入れられて、ぼくは生まれ育った場所から旅立った。
「やぁ、キミもかい」
声をかけてきたのは、ふわふわフリルの葉が自慢のサニーレタス。
「ちょいとごめんよ」
後から乗り込んで来たのは、弓なりのきゅうり達。
やがてぼくたちは、バスケットから出され、朝夕浴びていた水よりもたくさんの水、水、水の上。
「いよいよだね」
「どうやら我々は、噂にきくサラダバスになれそうだ」
先に到着していたラディッシュと、パプリカがうきうきした声で言う。
「サラダバス! 卵サラダに会えるかな? それともポテトサラダ? ツナサラダに会えたら、海のお話聞きたいなぁ」
ああ、その時が待ち遠しい!
まず、パプリカが水から引き上げられた。
サクッと軽い音がして、中から種が取り出された。
次にラディッシュ。ザクッと鈍い音がして、ふさふさ葉っぱと切り離された。
続いてキュウリ達。萎れた花と反対側をトンと切り落とされた。
サニーレタスは一枚一枚ばらばらになっていった。
いよいよ、ぼくの番だ。
「トマトいやっ!」
――ああ、どうやらぼくは、坊や行きのサラダバスになれそうにない。


トップイラストは、#7月7日はカルピスの日大賞 に書いたものに、デジタル加筆したものです。
(まさか、プロモーションで使われるなんて……)


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2022.9.18加筆修正