ウェザーメイク(毎週ショートショートnote)

「まだかな、まだかな」
「あともう少しだよ」
五歳になったばかりのちぃちゃんは父さんの手を握り、その父さんは手にしたスマホを時々見ながら答える。
「ほら、中継が始まったよ」
父さんはしゃがみ、ちぃちゃんにその画面を見せた。
「あ、かつ兄だ」
ちぃちゃんの二つ年上のかつ兄が手をふる。色違いのコートに毛糸の帽子、指先だけあいた手袋。それにふかふかの耳当て。ちぃちゃんが今居る場所よりも寒いからだろうか、吐く息が白い塊となって映り込む。
「うわっ、思ったよりも大人数だな」
かつ兄と同じような格好をした子供たちが次々と画面に現れ、手を振り返す。
「初雪は、これの五倍の応募があったそうなのよ」
「そんなに!」
画面の向こうで、かつ兄達が茶こしを大きくしたようなそれを手にし、その中に大きな氷の塊をいくつも入れて、合図と共に揺らし、
「あっ雪!」
それは小さな小さな雪の結晶。
雷様の子供たちがお仕事体験で降らせるそれ。人気がある初雪や粉雪は会費制で行われ、一番人気の虹は、お仕事体験の終わりに引くくじに当たった者のみ体験することができるという。


お題はこちらの「会員制の粉雪」から。