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読書感想文#08

前に読んだ「ときどき旅に出るカフェ」に続き近藤史恵さんの作品です。
物語の主人公は狩猟で生計を立てる大高とジビエを扱うフランス料理のシェフ潮田。前回と同様珍しい料理達が多数登場します!

命を巡る物語を読んで、改めて人間は自然界の覇者ではなく自然に生かされてる立場である事を再確認しました。

命を殺す、命を守る、命を食す。

これ以上人生を複雑にしたくない

作中で大高が山の中で質素に暮らす理由を知ってハッとしました。

人生を複雑にしたくない。

当時は上手く表現できなかったけど、私が言いたかったのはこれだと思いました。
私が会社員を辞めてフリーターになった時、周りの人になぜ辞めたのかと問われました。
例えば「せめて3年居ればよかったのに」とか「折角良い所に入れたのに」とか言われた時、私は自分の進みたい道をその都度言葉で説明してきましたが、その言葉は真意ではなく意思の表面をなぞっているだけな様な気がして暗い気持ちになっていました。

私はこの目的の為に藻掻き、その結果ゲストハウス、カフェと彷徨い今目前には畑がある。どの仕事も素晴らしい。

話が脱線しました…

狩猟で生計を立てる大高は側から見るとぶっきらぼうな物言いで、世捨て人の様に見えますが、実は世の中の矛盾や自然の素晴らしさを肌で感じる事ができる人一倍繊細な男です。
一方シェフの潮田は物腰が柔らかく優しい人間であると同時に、フランスで料理修行をしていた時は人一倍優秀な生徒でした。しかし帰国後、自分の店を始めると尽く失敗を繰り返し自信を喪失してしまいます。

潮田はジビエを通して大高に影響を受け、人間の都合で害獣として駆除される動物達に違和感を覚え、食材として扱う時はせめて美味しく頂こうとメニューを創作します。大高との出会いから、段々と新鮮なジビエ料理の種類が増えお客様が店に訪れる様子が美しかったです。

著書を読んで最近までの私は主に鶏・豚・牛の三種類の動物の肉を食していて、それが自然だと思っている事に気付きました。
当然私たちの体は自分たちが摂取した飲食物で形成されていますが、私はそれらがどんな環境で何を食して育ったのかわざわざ見ないようにしてきました。劣悪な環境で病気にならないようにワクチンを打たされた肉を、色形を均等にするため農薬が振り撒かれた作物を私たちは何気なく食べていることが多いのでは無いでしょうか。安全性についての検証は勿論なされているとは思いますが、現代科学における実験の結果は考慮する外乱や限定される条件によって大きく変化します。
実験の結果は対象の動植物を支配する環境全体と比較すると、ある条件下の瞬間を切りとった近視眼的な結果に過ぎず、人体にとって本当に安全で、数十年後も健康でいられるのかと問われると少し不安になってしまいます。

今ではスーパーに行けば食材が豊富にある事が日常ですが誰がどこで作り、どうやって屠殺、又は収穫したのか気にかける方は少ないのではないでしょうか。
私は買物で迷った時は価格で比較し、健康面についてはあまり考えたことはありませんでしたが、これからは余裕がある時は自給できるものは自給し、買い物をする時は透明性の高い食材を選ぼうと思いました。

こうした些細な取り組みから家畜として飼育され殺される動物が一体でも減り、自然が豊かになって欲しいです。

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