BIM(ARCHICAD)を使用して設計の仕事をしてきて思ったこと

BIM(ARCHICAD)を使用して設計の仕事をしてきて思ったこと

2008年からBIM(ARCHICAD)を使用して設計の仕事をしてきて感じたことを、良いところと困るところに分けてご紹介します。

良いところ

各図面が連動しているから便利

BIMの最大の利点は、各図面が連動していることです。2Dと3Dの間を行き来しながらあらゆる角度で確認できるため、設計の精度が格段に向上します。例えば、2Dで入力したモデルを3Dで確認しながらデザインをブラッシュアップできます。これにより、設計プロセスがスムーズになり、エラーの発生を防ぐことができます。

従来の設計方法では、2Dの図面と3Dのモデリングソフトを別々に使用することが一般的でしたが、この方法ではデータの連携が取れず、修正が発生すると大きな手間がかかりました。BIMを使用することで、これらの問題を解決し、効率的に作業を進めることができます。

コミュニケーションツールとして優秀

BIMは、クライアントだけでなく、社内スタッフや社外パートナーとのイメージ共有が非常に楽になります。設計案やデザインを正確に伝えることができるため、クライアントの意見を取り入れながら設計を進めることができます。

例えば、クライアントに設計案をプレゼンテーションする際、BIMの3Dモデルを使用することで、視覚的にわかりやすく説明することができます。また、設計の途中でクライアントからのフィードバックを受け取り、それを即座に反映することも可能です。これにより、クライアントの満足度を高めることができます。

さらに、リモートでの打ち合わせでもBIMとZoomを組み合わせることで、遠隔地の仕事でも効率的にコミュニケーションを取ることができます。例えば、設計の打ち合わせでは、ARCHICADの画面を共有しながらクライアントと進行状況を確認することができます。これにより、リアルタイムでのフィードバックを得ることができ、迅速な意思決定が可能になります。

困るところ

BIM以外での仕事が嫌になる

BIMが便利すぎて、他の方法で仕事をするのが嫌になることがあります。これにより、BIMを使用しない社外パートナーとの協力が難しくなることがあります。

例えば、BIMに慣れてしまうと、2D CADや他のモデリングソフトを使用する際に感じるストレスが大きくなります。これは、作業効率や精度がBIMに比べて劣るためです。その結果、BIMを使用していないパートナーとの協力が難しくなり、プロジェクトの進行に支障をきたすことがあります。

スタッフの育成が大変

BIMの導入には、スタッフの育成が不可欠です。特に新しく入社したスタッフには、通常の業務の進め方に加えてBIMツールの使い方を教える必要があります。

例えば、BIMを使用するためには、従来の2D CADとは異なるスキルセットが求められます。これには、3Dモデリングの知識や、BIM特有の機能を理解することが含まれます。新しいスタッフにこれらのスキルを習得させるには時間と労力がかかりますが、これがBIMの効果を最大限に引き出すためには欠かせません。

困る点への解決策

設計・デザイン検討ツールとしてのBIM

BIMは設計、デザイン作業に欠かせないツールです。例えば、基本設計や実施設計でもその連動性とスピードはもちろん、シミュレーションによる開口部の検討や詳細な収まりの検討、CGによる仕上げ材の検討などで素晴らしい効果を発揮します。

具体的には、建物の設計を進める際に、2D図面と3Dモデルを行き来しながら設計をブラッシュアップすることができます。これにより、設計の精度を高め、エラーを防ぐことができます。また、設計プロセス全体を通じて、クライアントや社内スタッフとのコミュニケーションが円滑に進みます。

例えば、BIMを使用することで、設計の各段階でリアルタイムに変更を反映することができるため、設計のスピードと効率が大幅に向上します。これにより、設計プロジェクトの進行がスムーズになり、クライアントの要望に迅速に対応することができます。

コミュニケーションツールとしてのBIM

クライアントに設計案を伝える際、BIMのモデルを使用することで、視覚的にわかりやすく説明できます。例えば、ARCHICADの作業画面をクライアントに見せながら打ち合わせを行うことで、大量の情報を効率的に伝えることができます。

さらに、BIMを使用することで、クライアントと一緒に設計案を検討しながら進めることができます。例えば、クライアントが特定のデザイン要素に関して変更を希望する場合、その場で3Dモデルを修正し、即座にフィードバックを得ることができます。これにより、クライアントの満足度を高めることができます。

スタッフの成長と仕事の共有

若いスタッフは、3D(BIM)をベースに仕事をすることで理解が早く、成長も早いです。例えば、社内で仕事を共有する際にも、BIMの『見える』ところが非常に活躍します。図面だけでなく、モデルを見ながら打ち合わせを行うことで、その仕事の概要を簡単に伝達することが可能です。

また、BIMを使用することで、スタッフ間のコミュニケーションが円滑になります。例えば、プロジェクトの進行状況や設計の変更点を視覚的に共有することで、誤解を防ぎ、効率的に作業を進めることができます。これにより、プロジェクト全体の品質を高めることができます。

テンプレート化と教育

複数の人間が関わる仕事では、秩序が必要です。ARCHICADの大量の設定を整理し、システム化することで、仕事の進め方が統一されます。また、テンプレートやマニュアル、教材を整備することで、新しいスタッフの教育を効率化しています。

具体的には、BIMの操作方法や設定をマニュアル化し、スタッフが困った際にすぐに参照できるようにしています。これにより、スタッフの教育時間を短縮し、効率的に業務を進めることができます。また、テンプレートを使用することで、プロジェクトごとに設定を統一し、作業の標準化を図ることができます。

社外とのネットワーク

仕事を進める上で、パートナー企業との連携は欠かせません。BIMを使用していないパートナーには、BIMで作成した図面を編集してもらう必要がありますが、これには時間とコストがかかります。一方、BIMを使用しているパートナーとはスムーズに協業できますが、各社のモデルやデータの作り方が異なるため、仕事の分担や頼み方をルール化することが必要です。

例えば、BIMを使用していないパートナーには、BIMで作成した図面をPDF形式などで提供し、編集やコメントをもらう方法を取ることが多いです。この方法では、BIMの利便性を十分に活用できないため、協力してBIMを学んでもらうか、必要な部分をこちらで編集する必要があります。

一方、BIMを使用しているパートナーとは、データの交換やモデルの共有がスムーズに行えますが、各社のルールやテンプレートが異なるため、共通のルールを設定することが重要です。これは、協力関係を円滑に進めるために必要なステップとなります。

具体的な取り組み

テンプレートの整備

BIMを使用する際には、多くの設定やルールがあります。これらを整理し、システム化することで、プロジェクトの進行をスムーズにすることができます。例えば、各プロジェクトに共通する設定をテンプレート化し、それを全スタッフが利用することで、作業の標準化を図ることができます。

具体的には、レイヤーやビュー、寸法設定などをテンプレートに含めることで、個々のプロジェクトで一から設定を行う必要がなくなります。また、テンプレートを使用することで、プロジェクトの進行において一貫性を保つことができ、品質の向上に寄与します。

マニュアルと教材の開発

新しいスタッフがBIMツールを使いこなせるようになるためには、体系的な教育が必要です。これまでの方法では、先輩スタッフがマンツーマンで教えることが多かったですが、この方法では教育にかかる時間が膨大で、標準化も難しいです。

そこで、BIMツールの操作方法や設計の基本をまとめたマニュアルを作成し、いつでも参照できるようにしています。さらに、具体的な事例を基にした教材を開発することで、新しいスタッフが実践的に学べる環境を整えています。これにより、教育の効率化と質の向上を図ることができます。

社外パートナーとの連携強化

BIMを使用していないパートナー企業に対しては、BIMの利点を説明し、可能であれば導入を促進しています。また、BIMを使用しているパートナー企業とは、共通のルールやテンプレートを設定し、データの互換性を確保することで、スムーズな協業を実現しています。

具体的には、プロジェクトの初期段階でパートナー企業と打ち合わせを行い、データの作成方法や共有方法について合意します。これにより、プロジェクトの進行中に発生するトラブルを最小限に抑えることができます。

遠隔コミュニケーションの活用

コロナ禍以降、リモートワークが一般化し、遠隔でのコミュニケーションが重要になっています。BIMとZoomなどのツールを組み合わせることで、遠隔地のクライアントやパートナー企業とも効率的に打ち合わせを行うことができます。

具体的には、設計の打ち合わせ時にARCHICADの画面を共有し、リアルタイムでのフィードバックを得ることができます。また、複数の拠点を持つ企業間の連携においても、BIMモデルを共有することで、視覚的に分かりやすく情報を伝えることができます。これにより、遠隔地にいても一体感を持ってプロジェクトを進めることが可能です。

まとめ

BIM(ARCHICAD)の導入は、設計業務の効率化やコミュニケーションの円滑化に大いに貢献しています。その一方で、スタッフの育成や社外パートナーとの連携には課題が残っています。しかし、これらの課題に対してテンプレートやマニュアルの整備、教育の充実などを進めることで、解決を図っています。

今後もBIMを活用し、設計の質を高めるとともに、クライアントやパートナー企業との協力を強化していくことで、より良い設計プロジェクトを実現していきます。BIMは単なるツールではなく、設計のプロセス全体を進化させるための重要な手段であり、これからもその可能性を追求していきます。

■BIMの一つの形としてのテンプレートを公開します

2008年から積み重ねたノウハウをBIMスペシャリストが一年かけて作成したテンプレート、ルール、説明書に加えて建物完成データを触って理解することの出来るデータのセットを公開します。
おそらく同レベルのデータセットは日本では販売されていないと思います。
内容からしても値段は格安に設定しています。
だいたいBIMをスクールで一通り習う程度でかかる費用と同じくらいです。
これを高いと思うか安いと思うかは人次第なのでなんとも言えませんが。

テンプレートについては下記のリンクをご覧下さい。
https://www.yokomatsu.info/ya-school/

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