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やらないと変わらない


映画「食べることは生きること~アリス・ウォータースのおいしい革命」を鑑賞して

先日、映画『食べることは生きること ~アリス・ウォータースのおいしい革命~』を鑑賞してきました。
アリス・ウォータースさんは、カリフォルニアで、“シェ・パニース”というレストランを始めました。直接、つくり手から、言い値で、レストランで使う食材を買うスタイルで、いわゆる「Farm to Table」の先駆けとなった方です。
また、エディブル・スクールヤード(食育菜園)の創始者としても活躍され、今では彼女がたった1校の中学で始めた活動は、世界で6000を超える教育現場に広がっているそうです。

彼女が起こして来た「おいしい革命」と、彼女の考え方の両方が映画の中でたくさん語られていました。どれも、とても共感することばかり。

彼女の一番有名なフレーズは「Your are What you eat」。あなたは、あなたが食べたもので出来ている。
食べることが全ての根幹で、食が人と人を繋ぎ、人が自然を知り、世界のあらゆる仕組みを知り、その中で自分が出来ていることを理解する。

環境を傷つけず里山をつくっている近隣の農家さん達から買い物をすることで、その土地が守られ、自分たちの食べる安全で美味しい食べ物が持続的に作られるようになっていく。

子供たちが、食べ物がどうやって自分たちの元に来ているか知ること。どう食べるかが、どう自分をつくるかであり、その自分たちが世界をつくっている、ということを理解すること。それが、これから世界を担っていく子供たちの活動の源泉や勇気になること。

本当に共感しかありません。むしろ、この考え方に「NO」という人なんているのかな?と思ってしまうほど。

でも、理想と現実は違うのでは?

ただ、私は映画を観ながら、めちゃくちゃ共感はするものの、どこかではモヤっとを抱えていました。

私は今、神奈川県鎌倉市に小さなお店「日本ワイン店じゃん」を開いて2年弱が経ったところです。
アリス・ウォータースさんと同じく、全ての日本ワインは、つくり手から直接購入し(もちろん値切ることも無く)、食が人と人を繋ぎ、その先が日本各地の土地を守ることに繋がると信じて、大きなダイニングテーブルを囲む角打ち営業をしています。

たくさんの農家さんに会いますし、自分も小さく商いをしていますが、正直、きれいごとだけではすみません。資本主義の社会の中で、自分の活動を継続させていくには、稼がないといけない。その方が良いからと、高い食材ばかり買ってレストランを経営するのは至難の業です。農家さんも同じで、規模の大きな農場の安いお野菜と、自分の野菜の値段が3倍くらい違った時に、消費者にどこまで選んでもらえるでしょう?

つまり「どうやって稼ぐねん」という、このモヤっとさ。アリス・ウォータースさんの考えに大手を振って賛成だし、とても共感する気持ちと、このモヤっとが、妙に共存しながら、映画の前半を鑑賞していました。

映画の中で印象的だったシーンは、日本のある農家(脱サラしてご夫婦で農家に転身)の方が、「実際には苦しいんだ」と主張し、アリス・ウォータースさんに「大丈夫、あなたのやっていることは間違っていないから」と声を掛けられて、号泣しているシーンでした。

この映画は、アリス・ウォータースさんが来日した時の映像をまとめたもので、映画の中には様々な方が登場します。
先ほど号泣していた農家の方もそうですし、日本でエディブル・スクールを運営されている方、里山の古民家で宿をされている方、和食の料理人。
アリス・ウォータースさんと同じように、情熱をもって活動されているたくさんの方が紹介されていくのを映画で鑑賞するうちに、私はきっと勇気をもらったのだと思います。

小さなことから始めよう

最初のうちに抱えていた「モヤッと」は消えないけれど、かといって、小さなことからやらないと何も変わらない。実際にそうやって何かを変えてきた人がたくさんいる。
アリス・ウォータースさんだって、最初は小さなレストランと、たった1校での活動でした。その始まりが無ければ、今の世界でのうねりのような動きは無いわけです。

正直、やってみたら大変なことや苦しいことはいっぱいあります。だけど共感してくれて一緒に活動に関わってくれている仲間と一緒に、ゆっくりと、でも確実に、小さなことから実にしていくことが大事だと、改めて自分のエネルギーの元火を大きくしてくれた、そんな映画でした。

自主上映会もOKだそうなので、鑑賞会をお店でやるのも良いかも!
やはりワイナリーのつくり手を沢山招いた「日本ワイン版メーカーズマーケット」みたいなものを鎌倉でやってみたい、等々、妄想膨らむ帰り道でした。


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