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ロマン主義の美術館に行った

正直言うと、この時期になると先ずはここのガーデンカフェに行きたくなる。
その次に常設展示。
そして特別展は取り敢えず行って見る位の気持ちだが、大抵は予想よりかなり良かった事が多い。

正直言うと、以前はロマン主義にそう興味があったわけではない。

そもそもロマン主義って何よ?

というあなたのために出来るだけ短い説明を試みる。

よく考えてみれば<ロマン主義>と日本語で言ってしまってから、何かこの言い方おかしいなと思い、色々と頭を捻ってみたが、良いアイディアが浮かんでこない。
 
どうしたらスマートに、かつわかりやすく簡潔に話せるのであろうか。

先ず、日本語で考えてみるとわかりやすいかもしれない。

私にとってはやはり一番先に森鴎外の
<舞姫>が浮かぶ。

「あら、教科書で読んだわよ。」
という人が多いと思うのだが、私も同様であった。

高校の頃に国語の授業でやった。

今思うと<ロマン主義(という表現は一切使わなかった)>を教えてくれた国語の先生は変わり者で有名であったが、あの独特のスタイルのおかげで私達生徒はあの内容の濃い名作の横を通り過ぎないで済んだ訳だから。

特に私は通常淡々とした喋り方の先生からあんな解釈が出てくるとは思わずに口をポカ〜ンとあけたままであった。
表情一つ変えずに情熱的な話をサラッと口にする。

今思うと書くのが好きになったのはあの先生のおかげかもしれない。

実は答えられない、或いは答えが先生の質問からそれていた場合、一時間椅子に座ることは許されなかった。

当然人の話を聞くことになるわな。

それは良い思い出として取っておいて、そう、私は一つの記事に取り組むときにず〜っと机に向かったりは決してしない。
取り敢えず一通り調べてみて、頭の中でまとめてみる。閃いたら一気に文章にしてみる。そしてそれを元にあーだこーだと練り直す。

皆さんは?
皆さんのやり方を是非教えてほしい。

更に今回ロマン主義美術館を訪れる前に、出来たらルーヴル美術館のドゥノン翼2階のロマン主義の部屋と新古典主義の部屋の作品郡を比べてみてほしい。
隣同士だから簡単に行き来出来る。

ジャック・ルイ・ダヴィッド(1748-1825)
<ホラティウス兄弟の誓い>
1784年


新古典主義といえばまずアングル、そしてダヴィッドの名が挙げられるが、ここではダヴィッドの名作、<ホラティウス兄弟の誓い>を選んでみた。

この絵を見ただけでは隠されているストーリーに気がつく人はいないと察する。
中央の男性がこの一家の父親でその左が三人兄弟、右が母親と娘である。
父親が、隣国のやはり三人兄弟との戦いに行く息子達に「勝つか、そうでなければ死んでこい。」と言って激励しながら誓いを立てさせているところである。

この話は紀元前の悲劇をもとにダヴィッドが絵画として仕上げたものだが、その結末は複雑で、あまりにも悲しい。

ダヴィッドは<ナポレオンとジョゼフィーヌの戴冠>で知られているが、上のような作品も描いている。

テオドール・ジェリコー(1794-1824)
<メデューズ号の筏>
1818-1819年


そしてロマン主義代表にはテオドール・ジェリコーの作品を選んだ。
こちらは一目見ただけで何が起こっているのかが一目瞭然である。
フランス海軍が遭難事故に会い、この筏で漂流しているところであるが、結局生き残ったのはたったの15人という話。

ジェリコーはこの絵を完成させるために筏や、また病院まで行って死体をスケッチしたりしたそうだ。
また、生き残った内の二人が記者会見に応じたそうだが、ジェリコーはそこにも出席したという。

漂流の間はかなり過酷であり、あるものは死んでしまった同僚の肉を食べて飢えを凌いだという。

壮絶である。

ジェリコーの努力はそれらの出来事を我々に伝えるのに見事に成功に導いた。
彼の絵の中には人々の嘆き、怒り、苦しみの表情が表現されている。
 
更には構成の中心はピラミッド型になっていて、その頂点には青年が船を見つけて一生懸命サインを送っている。
彼の顔は見えないが、背中に僅かではあるが希望が伺える。

これが<ロマン主義>なのか。

美術史の中で<新古典主義>はロマン主義より早くフランスに広まった動きである。
それ以前のバロック、ロココに反してギリシャの芸術を模範とした。
その辺りは前出の背景の建築からも明らかである。
それに対してロマン主義は恋愛賛美等、何より人間の感性の描写に重きをおいた、そう、主観を重要視しているところに大きな特徴がある。

さて、どこまで私の話に説得力があったのかは謎であるが、このまま今回の企画展示の紹介を始めよう。

ロマン主義美術館の企画展<ロマン主義のヒロイン達>はジャンヌ・ダルクからジョルジュ・サンドの作品にでてくるヒロイン達などから、最後はバレエの世界までに触れて、そう、絵画彫刻の世界に、演劇、音楽、更にはダンスの世界まで思想を広めていき、私達に訴えてくるのであった。

結局、ロマン主義とは人間の心の内面を表す手段であると思うととても身近なものに感じる。

展示作品で見ていくと、

上の2点はいずれもジャンヌ・ダルクを描いたものである。
ジャンヌ・ダルク自信は過去のヒロインであるが、ロマン主義時代の画家達の作品に登場している。
その後ジョルジュ・サンドの作品の中に出てくるヒロインや…、ノートル・ダム・ド・パリなど、「ふむふむ、あっこれ知ってる。」
と、思った作品が多々あった。

さて第二部は違う建物に移動するのだが、ここの美術館は薔薇が咲き始めてしまうと危険なのは常設、つまりこの場所をもともとアリイ・シェフェールが邸宅としていた建物と人気カフェが視界に入ってしまうこと。

我慢できなかった私は思わずそちらの方に。

ガーデンカフェ
常設展一部


常設は元々邸宅の持ち主であったアリイ・シェフェールやここに頻繁に出入りしていたジョルジュ・サンド、ショパンやドラクロワなどの思い出の品と展示中心。
興味ある人は逃せない。

特別展第一部の部屋。


実はここの常設は無料で見学できる。
入り口にはセキュリティのスタッフがいるのでカバンのコントロールさえクリア出来ればカフェのためだけに来ても良いのだ。

何時もは美術館見学の後カフェでコーヒーと、時には<ローズベーカリー>のイギリス・スタイルのケーキを食べることもあるのだが、その日は少し肌寒かったので我慢した。

勿論飲食用室内スペースもあるのだが、ここではやはり庭でなければ私にとって意味がない。

さて、それでも気分をふたたびリフレッシュして、後半戦に挑む、ということが出来る。
別館にあるのでここで特別展のチケットを購入した人は見せなくてはいけない。

地階の展示

ここでは地階と地上階にわかれているのだが、私は地階にある螺旋階段があまり好きではないので隅っこにあるエスカレーターを使う。螺旋階段は狭いので目が回ってくるのが理由である。

地上階にたどり着くと、私の表情が明るくなる。
パレエのヒロイン達の展示があったからだ。

ああ、そう言えば<ロミオとジュリエット>もそうだしなあ、ああ、ジゼルが…、私の顔がぱっと変わった。
モチベーションが、ダンスは実際に下手くそだけど自分でもするので違ってくる。


シルフィードのドレス
今にも動き始めそうな躍動感のある彫刻達


美しい、美し過ぎる。

私は大喜びであった、

とまあ、周りの人はこんな私を見て怪しいと思ったかもしれないが、ここでは皆それぞれ自分のペースて見学をしている。

そして疲れたらソファーに座って携帯をいじり始める人もいるし。

フランスではこんな美術館が結構あるし、折角企画展ではお金払って中に入っているのだからせかせかしなくても良いということ。
メモ取ってる人もいるし、写真はフラッシュを焚かなければほとんどの美術館はok, ただし気をつけなければいけないのは、極稀〜に作品の下の解説のそのまた下に小さくカメラマークにバッテンがしてあって撮影禁止を意味する事があるのでご用心。

何だかんだで半日、或いはそれ以上かけることもある私のロマン主義美術館訪問の日であった。


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