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あっと驚くパリのチョコレート職人達



もうすぐヴァレンタイン・デー。

な〜んて私が口に出すと、なんてわざとらしく、また冷めた感じに聞こえるのであろうか。

年中チョコたくさん食べているのに今更…、という気もあるし、20年以上も前に私がフランスについたばかりの頃は今ほどヴァレンタインが盛り上がってはいなかった。

その頃日本では愛の告白、あるいは<義理チョコ>真っ盛りで、ハッキリ言って嫌気がさしていたのでフランスに来てクールなヴァレンタイン・デーを過ごす事が出来て逆に「ラッキー」と思ったくらいだ。

ただし、フランスでヴァレンタイン・デーに何もしないわけではない。
日本と盛り上がり方が違うのである。

多くの場合はすでに恋人同士である二人が一緒に食事に行ったり、またこちらでは主に男性が花を贈ったり、またプロポーズをした人もいたっけ。もちろん夫婦になってからでも記念日とはまた違った喜びの一日を過ごしたりする。

ところが、最近では街の至るところで素敵なチョコレートのディスプレイを見かける。どうも日本のコマーシャルの影響を受けているようである。

見ている分には楽しくて良いのだが、好きな人は好きな人、チョコレートはチョコレートという気持ちの整理がついている私的には「これは私が食べるのだ。誰にもあげないぞ。」という溢れ出る感情を抑えられないのでチョコレート業界の戦略のお役にはちっとも立っていない。

愛の国フランスの今時の女の子達はどうなんだろう?

今度アンケートをとってみようか。


なにはともあれ、やはりフランスには美味しいチョコレート屋がたくさんあるので今回はその中から2つくらいにスポットライトをあててみようか。

何を基準にというと難しい。
チョコレートはどれも美味しいからである。まずいチョコレートにはまず当たったことがない。人の好みもそれぞれで、例えば私はというと、<チョコくさい>チョコレートが好きである。
ブラック、ミルク、ホワイトチョコと、どれも好きだが本当に美味しいと思ったらひたすらブラックを選ぶ。

チョコレート文化が最初にフランスに入ったのはバスク地方からだという。
そのせいか私はフレンチバスクの中心都市であるバイヨンヌのチョコレートが好きである。
未だにバイヨンヌに行くと可能な限り
<カズナーヴ(Cazenave)>に寄って大好きな、特にシナモン入り板チョコを買って帰る。更に時間とお腹に余裕があればサロン(喫茶室)に寄ってショコラ・ムスー(ホットココアに近い)をいただく。

クレーム・シャンティイとトーストも合わせたセットもあるが、バスク地方に行くときはいつも昼も夜もしっかり食べるのでなかなかチャレンジできない。従って周りの人のを見てるだけ(大抵の人は皆そのセットを注文する)。それでも満足感最大。ショコラ・ムスーそのものは写真でご覧の通り泡が多いのでお腹空いてなくても大丈夫。でも調子にのってクレーム・シャンティイをどっぷりとってしまうとちょっと大変かも。

1854年創業のショコラティエ。
サロンは20世紀始めにオープンしたそうだが、内装もリッチで落ち着いた感じ。


さて、話をパリに戻して今回の私の選んだ2つのショコラティエをご紹介。


まずは<ジャック・ジュナン>

パリのマレ地区、テュレンヌ通りにある本店に久し振りに寄ってチョコレートとコーヒーのセットでも…、と思ったらなんと店内飲食スペースはなくなっていた。
このジャック・ジュナンは日本でも注目されていて、輸入業者も何とか日本での進出展開を試みているのだが、使用する新鮮な材料にかなり気を使っている事から今日の今日まで断り続けているそうで、唯一高島屋ヴァレンタインデーの企画時に日本で手に入れる事ができるのだそうな。

アトリエにつながる螺旋階段

それだけにあの素敵な空間でケーキを食べたりはかなりお勧めだったのに。
素敵な螺旋階段の上はアトリエになっていて、そこで作って理想的な状態でサーヴィスされるというのは貴重なことである。
ジャック・ジュナンシェフはこだわりでも知られていて、納得いかないものを世に出したりはしない事でも有名だ。
以前「作りたくなくなった。」の理由で暫く店を閉めたこともあった。
ファンを失ってしまうのではと思ったが、何より妥協を許さないところがまさに彼らしい。

その前に二人のフランス人友人と一緒にここに来た。二人共甘い物好きなのでここのホットココアを勧めた。
ここのは半端ではない<飲むチョコレート>なのだ。しかしながら以前日本からビジネスで訪れた男性は通常甘いものをそう頻繁にとらないと言うことであったが、一度試してみたら病みつきになってしまったくらいだからこの二人も喜ぶだろうと確信していたのだが、結果はまさにその正反対で二人共「甘過ぎる」とか「病気になっちゃう」などと怒り出したのであった。

それほどチョコレート感が強すぎたのであろう。もうスィーツの世界を乗り越えたという感じであった。また、チョコ好きと甘いもの好きは必ずしも同じではないと言うことがよくわかった。

ジャック・ジュナンといえばチョコレート以外にフルーツジェリーやキャラメルも知られていて、私も大好きである。

キャラメル

これらは決して甘ったるくなくて新鮮な感じさえする。そのフレッシュ感を失った状態で販売したくないという理由から日本への進出は考えていないと念を押す店員さんの話はやはり納得がいく。

フルーツジェリー



今回私が選んだ二軒目は<パトリック・ロジェ>、ジャック・ジュナン同様シェフのフルネームである。

偶然ではあるがこちらもハート型チョコレートでヴァレンタイン勝負を決めようといったところか。

パリにいくつかあるパトリック・ロジェのうち個人的に一番好きなマレ店に寄ってみた。
メトロ11号線の<ランビュトー>の駅からランビュトー通りを真っ直ぐ行って左側。以前<メゾン・ド・ファミーユ>という素敵なインテリア雑貨の店だったところ。

店内から撮った写真


そこを改装して、更に独特の超ナイスなスタイルを取り入れたチョコのブティック。

チョコ彫刻


そして中にはチョコレート彫刻が数点。
そう、実はパトリック・ロジェはチョコレート職人であると同時に彫刻も手掛けるチョコレート・アーティストなのだ。

チョコ彫刻


美的感覚、そして皆に愛される味のチョコレート、特に<ドゥミ・スフェール>というドームの薄っぺらい、カラフルな型の中に閉じ込められた液状キャラメルガナッシュが頬張ると口の中で広がり、その瞬間に至福の時を思うことが出来る。私の中で今自分が最高の幸せを表現出来る立場に居ることがヒシヒシと感じられる。また、<ブラリネの魔術師>とも呼ばれているパトリック・ロジェの<プラリネロシェ>にも注目したい。

下のカラフルな方がドゥミ・スフェール


こちらの品々も日本ではまだまだ簡単には手に入らないらしいのでパリにお越しの際は是非お立ち寄りいただきたい。


パリには、そしてフランス全国にまだまだ素敵なチョコレート職人が活躍しているのだが、とても紹介しきれない(ちなみに私はアンチ・ヴァレンタインではないが、最初の方のくだらないヴァレンタイン話しをやめればもう一軒位詰め込めたが、きりがないので諦めた)ほどだ。

ニ軒ともヴァレンタイン時期に限らずいつ訪れても満足出来る。しかしながら旅行で訪れた人はお土産というより自分用に買って程よいタイミングで食べるほうが賢明だし幸せを実感できる。なぜならニ軒ともチョコレート製造の過程の中にある<瞬間>を大切にしており、その時を逃したら全くの別物になってしまう事を充分承知しているからである。言い方を変えれば、<食べ時>が重要で、それをはずしても美味しい事は美味しいけれど、彼らの食べる人へのメッセージが伝わりきれないであろうということだから。
勿論私は日本へのお土産にとかなり神経すり減らしながら買い求めて行ったこともあるけれど。

次回フランスの街中のチョコレート・ショップの魅力が満開になるのはイースター時期である。
今から待ち遠しい気持ちでいっぱい。

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