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弟子と師匠

東京に行き職探しをする時、なぜ飲食を選んだのか覚えていない。手に職も無かったし賄いがつくとかそんな理由だったと思う。

唯一採用されたレストランの上司が変な人だった。
三重県出身でローリングストーンズが好きなウェーブ髪で白いコックコートのシェフ。「おめーくらわすぞ」が口癖のいかつい志摩弁の僕の師匠。

僕は何々料理とか、そこを突き詰めた技術の仕事はした事がない。
その店もファミレス的に色んな料理を出す店だった。
和食の修行後、イタリア料理の勉強をしてた師匠は罵りながら僕に基本的な色々な事を教えてくれた。
出汁の取り方、肉の焼き方、野菜の処理の仕方、その時に書いたノートはもう水分や油分でグチャグチャだけど宝物だ。

師匠が仕事を早引けして来日していたストーンズのライブに行く時、「現場、後はやっといて」と店を任された時、やっと認められたのかと浮かれたが、この人やっぱ自分勝手だなと思い、それはそれで嬉しくなったりした。

そんな弟子だった僕にも弟子が出来、その弟子が独立するっていうんだから弟子冥利に尽きるよね。

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