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横浜銀蝿 最高峰のコミックソング

今回は思い切った結論から言おう。
横浜銀蝿の曲はコミックソングの宝庫である。それも最高峰のコミックソングだ。
こんなことを言うと一斉に「暴論だ!」とツッコミの反論がありそうだが、オレはけしてコミックソングを悪い意味で言っているのではない。
むしろ最大級の褒め言葉として言っている。

コミックソングをWikipediaで調べてみると
〈滑稽な持ち味の音楽〉と書かれている。

むろん横浜銀蝿はロックンロールバンドだ。それは誰がなんと言おうと間違いない。そこに異論はないだろう。
ここの線引きは難しいが、コミックソングを歌っているといってもコミックバンドではない。演奏されている曲はどれもロックンロールでありながらそこにはユーモアのある歌詞が乗り、聞き手が楽しくなるような曲が揃っているのだ。

ここでオレが言いたいのは横浜銀蝿はお笑いやコメディアンのバンドではないということだ。ただし聴衆を楽しませるための演出や様々なユーモアを持つ音楽集団といえばなんとなく納得してくれる人がいるかもしれない。
爆笑するような笑いの要素ではなく、ニヤリと笑みがこぼれるような歌詞や演出が数多く散りばめられているのだ。

そんな横浜銀蝿はそれまでのロックンロールバンドとは一線を画す。
ただのロックンロールじゃつまらない。
そういったバンドは過去にいくらでもいた。
ロックンロールをベースにしながらも、ユーモアに溢れる誰にでも理解できる言葉、歌詞がリズムに乗って、大勢の聞き手を楽しませていた。さらにはファッションを含む演出、時には若者へのメッセージ性まで兼ね備えていたのだから若者に爆発的に支持されていたのもうなずけるであろう。

オレが横浜銀蝿の曲をコミックソングという理由は、遊び心が満載に詰まっているところが一番の理由である。リアルタイムで聞いていた当時はそんなことまでを考えて聞いていたわけではない。大人になって聞き返してみてはじめて気づいたことだ。

歌詞にユーモアがある。ただそれだけでは長い期間売れ続けることは難しい。では何故横浜銀蝿は解散するまで人気をキープすることができたのか。それは沢山の理由があるはずだが、まずはメロディーが抜群にいいということが挙げられるだろう。だからこそ一発屋で終わらずに走り抜けることができたんだと思っている。そして銀蝿一家として弟分妹分が続いていき巨大な音楽集団になりえたわけだ。

デビュー当初はストレートなロックンロールバンドであった横浜銀蝿が大胆にコミックソングに挑戦したのは「ツッパリHigh School Rock'n Roll(登校編)」であろう。その最初のチャレンジに大成功し、本格的に幅を広げるべく曲調や歌詞にコミックソングの要素を取り入れることになった分岐点はサードアルバム「仏恥義理蹉䵷怒」であろう。「♀大好きRock'n Roll」「ビニボンRock'n Roll」あたりはそれまでのツッパリ・車・バイクといった横浜銀蝿ならではの不良の音楽の枠を飛び越えている。


 オンナオンナオンナオンナオンナ
 オンナをおとすにゃ

 あせらず あわてず
 あいてに あわせて
 あかるく I love you

 すぎゆく夜に この身をまかせ
 そして ひとみが うるんできたら
  
 あと一歩 もういっちょ
 がんばれ はりきれ
(それゆけ やれゆけ)
 気合い入れて 朝までSatisfy!


なんとも清々しいほどの馬鹿さ加減だ。もはや不良うんぬんではなく、男なら誰でも持っているくだらなさが全開である。その後はさらにこういったコミックソングな曲調が増えていく。

「It's Only Rock'n Roll集会のテーマ(のれのれRock'n Roll)」「あせかきベソかきRock'n Roll Run」「銀ばるRock'n Roll」「ツッパリ発→エリート行」「とばしてRock'n Roll Way」といったタイトルだけ見ても完全に振り切れていることが分かるだろう。この振り切れたコミックソング達に揃って言えることは、全ての曲にもれなく超絶キャッチーなメロディがついでくるということだ。これが横浜銀蝿にとって最強の武器となったことは間違いない。

横浜銀蝿が自らのユーモアとセンスでツッパリ・不良の枠を突き破ったことで不良の音楽が一般の若者層まで広がったのだ。そのおかげでその後続く銀蝿一家の弟分達はなんでもありのチャレンジを躊躇なくできたであろう。これが銀蝿一家の強みであり、実際に若者を夢中にさせたという歴史的事実である。
 

 はずかしがり屋も… 気取った野郎も…
 いじけた奴らも…おどけたあいつも…
 メロッコメンタも…ヤロッコオンタも…
 ここにいる奴はみんなRock'n Roller!

 リーゼントボーヤも…ガリベン眼鏡も…
 大人も子供も…あいつもこいつも…
 恋人同士も…もてない奴でも…
 ここにいる奴はみんなRock'n Roller!     

 ローラーきめても…ハマトラギャルでも…
 アイビールックも…ヤンキーボーイも…
 ニュートラやっぱし…コンチも負けずに…
 リズムに乗ってIt's just Happy time

 学校の先生も…ホワイトカラーも…
 お巡りさんでも…演歌の歌手でも…
 カミナリオヤジも…PTAまで
 ここにいる奴はみんなRock'n Roller!


要するになんでもありなのだ。ゴロがいい言葉を並べてリズムに合わせ、言葉遊びのようにこれでもかというほどの言葉をたたみかけるのが痛快で、結局そこにいる奴みんなが
Rock'n Rollerなのだと言い切っている。

このコラムの最初に横浜銀蝿の曲をコミックソングと呼ぶことが最大級の褒め言葉だと書いたが、ここまで書いてやはりこの論理に間違いはないことを改めて確信している。

遊び心がとことん詰まった横浜銀蝿の曲達は、あれから40年近く経とうとしている今でもまったく色あせていない。まさに最高峰のコミックソングたちなのである。


it's only Rock'n Roll

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