【童話】欲しかった言葉

逆上がりが出来なかった。

だから毎日、放課後に練習した。

鉄棒は大きな樹の下にあって、綺麗な花も咲いたけど、そのあと毛虫が大量発生した。

落ちてきたら嫌だなぁ。

そう思いながら練習した。

そして体育の授業の時、わたしは逆上がりが出来るようになっていた。

先生は何も云わなかった。

マットの時、わたしは後転が出来なかった。

だから家で練習した。

体育の授業の時、わたしは後転が出来るようになっていた。

先生は何も云わなかった。

持久走大会の時、わたしはビリだった。

ゴールした時、みんなは教室に戻っていた。

一人残っていた先生は、何も云わなかった。

       “よく頑張ったね”

そう云って欲しかった。

出来なくて、たくさん怒られたから、だから頑張ったんだよ。

ビリでも最後まで走ったよ。

悲しかった。