レベルファイブの総決算『二ノ国II レヴァナントキングダム』

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最近の若いもんは「レベルファイブ? ああ、あのお子様向けゲームを作っている会社ね」などと言うのでしょうが、おっさんゲーマーにしてみれば『ダーククラウド』(PS2)で鮮烈にデビューし『ローグギャラクシー』(PS2)と『 白騎士物語 』(PS3)で多くのゲーマーを悶絶させた“ハードコア”な会社であります。

みんなやってないでしょ? 『イナズマイレブン』とか『妖怪ウォッチ』シリーズとか。時代を創ったゲームメーカーであるにも関わらず、特定のプレイヤー層には訴求しない、嫌でも目に入るのに無視されてきた、それが近年のレベルファイブなのではないかと思います。

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同社は、時代のカリスマとも言える日野晃博氏を中心にゲーム開発を行うワントップ体制でおなじみです。本作『二ノ国II』も同氏の手による作品です。

なので、正直、僕も敬遠していました。前作も含めて。日野さんの作る話は良く言えば単純明快、悪く言えばおもしろくないんですよね。少なくとも、映画や小説など、 数多くの 物語に触れてきた人間の鑑賞に耐えうるレベルのものではない。人間の機微や裏腹さが描かれず、ひらべったい物語を書く人。そういう印象です。

ただ、この『二ノ国II』では、その世界観もあいまって、大して気にはならないんです。そこまで物語を深掘りする雰囲気ではないですし。

じゃあ、お話にまったく魅力が無いかと言うと、そこはヒットメーカーです。とんでもなく強力なフックが用意されていました。

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主人公はエバンという、王位を追われた王です。RPGの王道である貴種流離譚なわけですが、もうね、このエバンが可愛くて仕方がない。

いや、本当の主人公はロウランというエバンにとっての参謀格のキャラクターで、プレイヤーの視点は「エバンを補佐するロウラン」にあります。おっさんがプレイするとそうなります。もし、子供がこのゲームを遊んだら、間違いなくエバンが主人公なのでしょうが。

話の大筋は、エバンが新しい国を作り、世界中の国々と同盟を締結して“平和な二ノ国”を目指すというもの。

そんな無邪気な世迷い言を実現するために、ロウランは、プレイヤーは世界を駆けずり回るのです。

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無茶な夢を叶えるため、前進するエバン。その姿を見守るため、プレイヤーはずるずると二ノ国の世界に引きずり込まれるわけです。

そして特筆すべきなのは、テンポの良さです。

いくらキャラクターが可愛くても、ゲームとしてのテンポが悪ければ簡単にプレイヤーが離れていきます。よくあるでしょ? キャラクターデザインに力を入れて、肝心のゲーム本編がぐだぐだなRPG。

そのテンポの良さを如実に示しているのが、この『二ノ国II』の最終クリアで得られるトロフィーの取得率です。クリア時にアンロックされる“受け継がれる意思”トロフィーの取得状況は、なんと驚異の36%。

このゲームをプレイした3人に1人は最後まで遊んでいる。これは素直にすごいと思います。

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戦闘の形式はアクションです。と言っても、僕は難易度ノーマルで遊んでいましたが、サクサクと終わります。「アクションRPGは好きじゃない」と敬遠している人でも、まったく問題無いと思います。

戦闘がアクションのRPGというとテイルズシリーズが有名ですが、あれより遥かに良くできています。僕はテイルズをやっていると、だんだんと戦闘に飽きてきてオートにしちゃうのが最近だったのですが、この二ノ国IIは最後までマニュアルで遊んでいました。

やっぱり、テンポですよね。面倒なコンボとか無いし、弱攻撃と強攻撃と回避がメインで、ノリとしては無双シリーズに近いかな。

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ゲームシステムとして用意されている“バトルイコライザー”。これもなかなか面白い仕組み。RPGの戦闘システムの常道として「弱点属性を突く」という方法がありますが、それを簡単に実現するのがこのシステム。

「ここはスライムが多いから、スライムに強い設定にしよう」みたいな感じで、ちょいちょいっとイコライザーをいじるわけです。そうするともう、スライムをなで斬りにできるんです。

毒がうざいから毒耐性を強化しよう、とかもできます。いちいち、装備を揃える必要も無い。実に合理的な仕組みです。

ただ、このシステムの弊害か、雑魚モンスターの種類が少ないんですよね。わかりやすさを重視したのだと思いますが、気になる人には気になるかもしれません。

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テンポを維持することに気を遣っているなと感じるのは、戦闘だけではありません。物語の進行上、避けられないダンジョンの仕組みにも感じました。

長中短、パズルの難易度、セーブポイントの配置。きっちりと考えられている。バランス調整に心を砕いているな、という快適さ。不要なストレスが無い。

あの『ローグギャラクシー』の悲劇から幾星霜、思わず空を仰ぎたくなりました。

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実際に僕は「あれよあれよ」という間にクリアしてしまいましたが、『ダーククラウド』から『スナックワールド』まで連綿と続くレベルファイブのフォーミュラはしっかりと継承されています。やりこみ要素ですね。

やりこみ具合で言えば、クリア時点で「3分の1終わったかな?」くらい。それでもクリアできちゃう。もしこの世界が気に入ったのであれば、やりこんだっていいんだよ? そんな感じです。

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日野さんのストーリー、レベルファイブのDNA、それらが「良質なものを作ろう」という信念の下に注ぎ込まれている。それをしっかりと感じられる作品です。

言っちゃなんですけど、PS4で遊ぶべきRPGはこれと『ドラゴンクエストXI』『ペルソナ5』だけで十分です。そう断言できます。

だって、街を歩いていて、階段の上りと下りでキャラクターのモーションが違うんですよ? 二ノ国IIは。タンタンタンとターンターンターンみたいな。

この芸の細かさは、『妖怪ウォッチ』シリーズで、家に入るときに靴を脱ぎ、出るときに靴を履く、そんなことを3DSの小さな画面でいちいち表現するレベルファイブならではだと感じました。心血の注ぎ方が半端じゃない。そんなディティールにまでこだわっていたら、いつまでたってもゲームが完成しませんよ、普通。

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とまあ、百聞は一見にしかず。PS4をお持ちの方は、さくっと『二ノ国II』を遊んでみることをお薦めします。軽度のケモナーの方、殺伐とした世界に疲れてしまった方、CERO Zのゲームばかりをやっている方は特に。

※PC版(Steam)も発売されています

ちなみに、主人公エバン(の声)は俳優の志田未来さんが演じていますが、良かったと思います。主要キャラはみな俳優さんが演じているものの、違和感はありません。むしろ、ハマっていると思います。ゲームを進めていくと、もう「誰が誰を演じている」なんてことは忘れてますから。

新年一発目のクリアはこの『二ノ国II』となりました。ありがとうレベルファイブ、ありがとう日野さん。PS3のフリープレイで来ていた前作『二ノ国』もやってみようかな。

でも正直言うと、このゲームのDLCもちょっと気になっているんですよね。ホームページを見ると、あの侍女さんが何か絡んでいるみたいなことがほのめかしてあるし……。

今年も、積みゲーの消化がはかどりそうもありません。

【公式HP】https://www.ninokuni.jp/rk/

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