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笛がおこす共鳴共振♪笛を吹いていて良かったと思ったことをお話したいです。

音楽は、どんなときもどんな人の心も、優しく癒し揺り動かしてくれるものなんだなと思ったお話をしようと思います。

2015年3月19日 父を見送る前々日のこと。父は2年ほど咽頭がんで闘病し、最後はホスピスにお世話になりました。もう今日あたりが山ですね、とのことで、本人が喜ぶことをしてやって良いという状態でした。

歌の好きな父でしたので、懐かしい日本の歌の分厚い本をページに折り目を付けて持っていました。折り目のついたところの歌を、笛で吹いてやったんです。母もそばにいて一緒に歌ってみたりして。本人は、声帯を腫瘍ごと取ってしまったので声は出せませんでした。

本当は、そんなに仲の良い父娘ではなかったのです。せめてもの何か?と思ったときに私には笛しかありませんでしたし、何曲か吹いて、父は手をあわせてありがとうという仕草を見せましたので少しは喜んでくれたかしらと私も嬉しかったです。

翌日、お部屋に看護師さんが来られたときに、「昨日笛を吹いていたのは娘さんですか?」と。聞くと、お隣にはもう殆んどコミュニケーションできない状態の高齢の女性がおられて、家族の呼び掛けにも殆んど反応されないような状態だったのに、笛の音を聞いて、身体を揺すりながら

「この歌すき」

とおっしゃったと。皆さん驚かれたんだというお話でした。私ごときの笛の音でそのように誰かの心や身体が揺り動かされたとしたら、それは音の持つ力だろうなと思ったわけです。

音は、振動です。人の持つ60兆個の細胞のひとつひとつに共鳴する周波数があるのだとか。もしか、笛の音の振動がその方の御体のどこかしらに響き、共鳴共振し、この歌は好きな歌だったと思い出させる手伝いをし、

ほんの少しだけど心地好い時間を持っていただくことができたのなら、有難いことだなと思いました。自分の笛が他人に影響をするという経験はその時が初めてで、お話を聞いて大変驚きました。笛を吹いていて良かったと感じたエピソードです。

父は、翌日21日に日付が変わってすぐに逝きました。夫婦の金婚式を意地で迎えて逝きました。父は金婚式を楽しみにしていたらしい。母はそれを今さらなんなん?と気味悪がっていた(笑)。父母と子ども3人と、金婚式のお祝いをコーヒーで乾杯もして、そして、安心したのでしょう。大きな息をして、そのあとはもう静かになりました。家族全員に看取られて逝くとは、なんて幸せな人でしょうか。ワガママで勝手で怒りやすく話が通じない、宇宙人としか思えない人だったのに。

明日明後日、2020年6月27日、28日は、私にとって大きな笛のステージです。聴く人の心に届く演奏ができるようにと思います。

寧、