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「製造者の私」と「経営者の私」がやっと手を取り合って一緒に歩み始めた

2023年12月末、無事に営業を終えたYOKO BAKESですが、同時に大きな課題とも直面していました。というのも、実は、私は「経営者」であることに、これまでずっと、ずっとずっとず~~~~~っと、背を向けていました。見てみないフリをして、避けて通って、出来ることなら関わりたくなかったのです、「経営者」というものに。


製造者の私と経営者の私

そして私の中には、お菓子作りが好きな「製造者の私」と、お店を続ける為にはお金のあれこれをやらなきゃいけない「経営者の私」の2人がいました。そして、この2人、とても仲が悪かったのです。なぜかと言うと、私は「経営者=悪」という固定観念があったから。

これは「好きなことを始めたけど、経営で悩んでいる」という方、「得意なことがあるけれど、それでお金を稼ぐということに、どこか引け目を感じている」という方に、読んで欲しいなと思って書いています。もしかしたら、私みたいに悩んで苦しんでいる人がいるかも知れない、その人の為に書こう、そう思って書いています。

本当に正直なことを言うと、私は、お金は汚いって、ずっと思っていました。思っていた、というか、それが私のお金に対する、自然な反応だったのです。幼少期の体験だったり、教育だったり、社会だったり、色んな経験が混じって築かれたものだと思います。

なので、「経営」や「お金儲け」に対するイメージは「汚い、悪い、ずるい」でした。そんな私が、お菓子作りを仕事にすることを決め、お店を始めた訳です。お店はもちろん続けたいので、経営することは大切です。なのでちゃんと数字を見ます。しかしそこには「お金=悪」というスティグマがあるので、それは辛い行為となります。

経営者の私は、お店をより健全にする為には、もっと売り上げが必要だ、と言います。でも製造者の私は、それを「悪」と感じ、拒否し、「私は私の好きなお菓子作りを自由に楽しみたいんだ!」と反発して、お菓子を焼きます。でもその行為は売り上げに直結するので、「売上は悪」とどこかで感じている私は、お菓子を焼くこともまた、辛いこととなってしまっていたんです。1人の私の中に、対立する2人がいて、どっちもあんまり、楽しくなさそうですよね(笑)。

経営にまっすぐ向き合えない私は、どこか漠然とした不安から、とにかく、たくさんお菓子を焼かなくては、という衝動に駆られていました。経費が払えなったらどうしよう、借金を返す前にお店が潰れたらどうしよう、そんな冷静に考えれば大丈夫なことすら、不安で不安で、不安をかき消す為に焼いて焼いて、でもそれが辛くて辛くて、そんな時間をずっと過ごしてきたように思います。そして、いくら焼いても、不安が消えることはありませんでした。

そして、もうそれにはウンザリ!私はこんなお菓子の焼き方をしたくてお店を始めたんじゃないんだ!!って爆発したのが、12月でした。もう本当に、こんな自分の在り方に、とっことん嫌気がさしたんです!私にとってのお菓子作りは、こんなんじゃないんだ!!って、自分の中で何か噴火したような。

起業した人、自分のお店を開いた人なら、時折疑問に思うことかも知れません。「何の為にやってるんだっけ?」という問いは、私の中にずっとありました。毎日、答えを探し求めて、自分の「好き」や「楽しい」をお菓子作りに見出したかったけれど、どうしても、それだけでは説明できない何かが、ありました。

だって、好きなことを自由に楽しくやりたいんだったら、家でお菓子焼いてればよかったんじゃない?って思うんです。わざわざお店を構えなくても、家でのんびり、自分のペースで好きなだけ、焼けばいい。それだったら、お金の心配もいらないし、時間に縛られることもない。だけど、私の中には、それだけでは事足りない、何かがあったんです。

原点を思い出させてくれたあること

それを思い出させてくれたのが、&ONの温ちゃんでした。私はお店を持つ前に、鎌倉のシェアスペースで定期的に出店していたのですが、そこの運営をしているのが、彼女です。YOKO BAKESが開店したとき、そしてその後も、駆けつけて手伝ってくれた、このお店の恩人です。なのですが、彼女とは、5月にひょんなことがきっかけで、ずっと連絡をとっていない状態でした。クリスマスまでには、私から連絡しよう、と思っていた矢先、彼女からLINEをくれて、約7か月ぶりに、お店に来てくれたんです。

温ちゃんはは5月に「おんたま」という小売&カフェをオープンしたのですが、「そこで次の日に提供するスイーツが欲しい」、ということで、来店時にミンスパイを10個も買ってくれたんです。

その日、お店はすごく静かだったので、私は内心、「良かった〜これで今日の売り上げがちょっと確保できた」と罪悪感を感じつつも、思っていたんです。そしたら、かたや温ちゃんは、「あ~~~~良かった!これで明日のケーキがゲットできた!」って、めちゃくちゃ嬉しそうなんです。何だか私には、それがすっごく衝撃的でした!

私は、ずっと、「お客さんからお金を取っている」と思ってたんです。私が儲ける、ということは、お客さんからお金を取るということ。それも「無理やり取る」みたいな類の、悪いイメージで無意識的に捉えていたんです。私の売り上げが上がる=お客さんのロスが多くなる、みたいな構造が、私のどこかで出来上がっていました。

でも、温ちゃんは、この一瞬で、その構造をひっくり返してくれたんです。「ほら!容子ちゃん!私はあなたのケーキを、お金を払って買って、嬉しいんだよ!!」って。そして、店頭で見ていたら、どのお客さんも、「わ~ケーキまだあって良かった!」って、本当に嬉しそうに、お買い物をして笑顔で帰っていく。そんないつもの光景が、その日はとても衝撃的でした。

次の日、私のミンスパイを「おんたま」で売ってくれた温ちゃんから、こんなメッセージが届きました。「みんな喜んでたよ〜!やっぱり容子ちゃんのケーキはみんなを幸せにするね!」って。同時に、他にケーキを買って下さった方からも、「容子ちゃんのケーキはやっぱり人を幸せにするね!」って、メッセージが送られてきました。

私は、なんだかハッとしました。私のケーキは、誰かを幸せにするの?って。そして、そこにこそ、私が家で焼いてるだけでは事足りない、「何か」があるんだってことに、やっと気付いたんです。

大好きなケーキ作りを通して、誰かの役に立ちたい

気付いた、というか、ずっとそこにあったものに、やっと帰ってこれた、と言う方が正確かも知れません。好きなことを仕事にするなら、他にも選択肢はあったはず。なのに、初期投資も馬鹿にならなくて、その割に薄利多売な「ケーキ屋さん」を始めることに、お菓子作りをビジネスとしてやることに、私は決めたのです。そして、そこには、「誰かの役に立ちたい」という、とってもシンプルで、でもとっても深い部分にある、私の欲求があったと思うのです。(気付いたら他のnoteの記事にも一貫して書いてありました)

そして、その「自分が大好きなケーキ作りを通して、誰かの役に立ちたい」、という、もう自分の腹の底から全細胞から溢れ出て止まない欲求が、私をここまで引っ張ってきたのだと、今では思っています。

そして、この経験を通して、別人だった「製造者の私」と「経営者の私」が、やっと手と手を取り合って、一緒に歩みだし始めた、そんな風に感じています。

他の記事にも書いたことがあるのですが、皆さんの、「美味しかったよ!」の一言が、これまでも、これからも、ずっと原動力です。私のケーキを食べて、喜びや幸せを感じる人が、今、私の目の前にいる。もしかしたら、私が経験したようにパニックや不安障害で苦しんでいる人だって、束の間、ケーキを食べながら自分と向き合う時間を持てるかも知れない。悲しみに明け暮れてる人に、明日に繋がる小さな楽しみができるかも知れない。私のお店へ来て、何だかありのままを受け入れて貰えたような、そんな感覚を味わってもらえるかも知れない。何か夢に向かって踏み出してみよう!って、勇気づけられる人もいるかも知れない。大切な日の、家族との思い出ができる人もいるかも知れない。

もしかしたら、私のプラスチックフリーのパッケージを見て、真似してくれるお店が増えるかも知れない。そんなお店がもっと増えたら、地域全体で、もっとプラごみを減らせる。私の働き方を見て、自分のライフステージに合った働き方を選び、もっと幸せに働ける人が増えるかも知れない。子どもがいるから、と仕事や起業を諦めていた人が、希望を持てるかも知れない。お菓子作りは大変な仕事だから、と躊躇していた人が、自分の生活を守りながらも、働くことを楽しんでくれるかも知れない。

上手くまとめられないのですが、ケーキ屋さんには、何かそんな大きな力があるような気がするのです。

2020年2月、まだ英語教室を家で開催していた時のことです。コロナがジワジワとはやり始め、世の中がどんどん変わっていく中、私は「バレンタイン企画」と称して、一人お菓子屋さんごっこをしていました。

思いの外たくさんの注文を頂いて、それぞれのギフトボックスに入れる用に自作したカードの1枚を、私は取っておいたみたいです。

ここにも、私がお店を始めた理由が、ちゃんとありました。小さなケーキ屋さんが出来ること。私はそこに大きな希望を見出しています。今の社会の在り方を、自然との関わり方を、私は小さなケーキ屋さんから、問い続けたい。そして、ここから、今を、未来を、切り開いていきたい。そう思っています。

これからも、きっと迷うことはあるでしょう。迷って、悩んで、分からなくなって、休んで、見直して、軌道修正して、多分その繰り返しです。でも、私は、このYOKO BAKESという船から降りたりはしません。色んな乗組員が乗って、降りて、それが繰り返されても、私はずっとキャプテンでい続けます。

こうしてこの冬、私はお店を始めた原点に、帰ることが出来た気がしています。イギリスに住んでいる頃のものも含め、これまで書いた何冊もの手書きノートを見返しても、ずっと何も変わっていませんでした。お店を始めた大変さでしばらく埋もれていたけれど、私がYOKO BAKESを始めた理由、続ける理由は、ちゃんとずっと、そこにあったんだと、少しほっとしています。

というわけで、2024年も成長の年となりそうな当店です。今年の年末には、YOKO BAKESはどうなっているんでしょう?来年は、再来年は、10年後は?と考えると、今からワクワクします。今年も、そしてこれからも、YOKO BAKESを温かく見守り、応援していてください。皆さんの幸せそうな笑顔が、私にとって何よりのエネルギーの源です。

いつも本当に、ありがとうございます。

たくさんの愛を込めて Yokoより

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